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2018.10.01 COLUMN

持っていますか?新卒採用戦略【後編】

改めて皆さんにこの質問をいたします。

「御社はどんな人物を採用したいですか?」

前回のコラムでは、新卒採用の要諦についてお話してきました。今回は、少し具体的に、どの選考階層でどんなところを見ていけば、貴社にとってよい人材を採用できるのかについて、見ていくことにいたしましょう。

新卒採用は、以下の流れで進んでいくことが一般的です。

書類選考→筆記試験→集団面接or グループディスカッション→個別面接→最終面接→内定

面接選考の回数は、貴社を受ける母集団の数によって変わることがありますが、このような流れで進んでいくことが多いようです。

それでは、それぞれの選考階層で、どのようなところを見ていくと、よい人材の採用につながっていくのかについて見ていくことにいたしましょう。

書類選考では、基本的な文章力があるかどうかを見る

書類選考は、応募学生に履歴書やエントリーシートの提出を求める選考です。書類選考では、応募学生の基本的な情報を知るということになります。

履歴書では、大学の専攻(ゼミナール)、自己PR、授業以外で学生時代に力を注いだこと、志望動機などを尋ねることができます。

一方、エントリーシートでは、企業独自(任意)の質問を設定して、自社の採用要件を満たす人物であるかどうかを確認することができます。設問は、できるだけそれらを確認できるようなものが望ましいです。

書類選考を通じて、学生は、自己PR、志望動機、学生時代に頑張ったことなど、それぞれの設問で、相手に伝わる論理的な文章を書く必要があります。そこで、採用担当者としては、基本的な文章力や論理的思考力があるかどうかもわかります。もちろん、その中で、自社に貢献できる人材であるかどうかも、垣間見ることができると思います。

最近は、手書きの履歴書ではなく、所定のウェブサイトにアクセスして入力し、書いた内容を送ってもらうというスタイルも多くなっているようです。そうすると、文字の読みやすさや綺麗さは、そこまで気にしなくてもよくなります。

しかしながら、まとまった文章を書く必要性に迫られるという点では、手書きも、ウェブも共通しています。ビジネスの場面でも、メール、報告書、企画書など、思いのほかまとまった文章を書く機会は多いです。そうした基本的な文章力を見る、自社の採用要件を満たす人物を選び出すという視点で、書類選考を進めていくと、よりよい人材の確保につながっていくと考えます。

筆記試験で確認すべきは、基礎学力と業務適性

筆記試験で確認することは、業務に必要な基礎学力と業務への適性があるかどうかです。

基礎学力は、「SPI」や「GAB」、「内田クレペリン」など専門業者が作成したテストを用いて図ることができます。また、先の業者テストとは異なるものとして、自社オリジナルの試験(国語、高校程度の数学、時事・一般常識、英語など)を作成して、学生の基礎学力を図る企業も多いようです。前々回のコラムにも書きましたが、小論文を課すのも、よい試みだと思います。

求める学力のレベルは、当然企業によっても異なりますが、基礎学力が低く、成果を出す可能性が低い学生は、採用担当者からすると、どうしても敬遠したくなるのではないでしょうか。そのような学生を、筆記試験で事前に選別すると、よりよい人材を確保できる可能性が高まります。

ただ、書類選考、筆記試験だけではなく、やはり、直接会って、”実際のところ”を確認する必要があると思います。そこで実施するのが、面接選考です。

面接選考の主な種類は、集団面接、グループディスカッション、個別面接の3種類があります。それぞれの面接選考の種類を、どのような要領で用いればよいのか、以下解説していきます。

集団面接は、第一印象、話の論理性、志望強度の高さを確認

集団面接は、複数の応募学生と面接官が相対する面接の形式です。応募学生が多い選考の初期階層で、次の個別面接に進む学生を効率よく選び出すために行います。集団面接は、グループ面接とも呼ばれ、最低学生2名からでも実施することができます。

集団面接では、一般的に横一列に応募学生に座ってもらい、原則として、面接官が全員に同じ質問をして学生を比較していくかたちで進めていきます。

ここで大切なのは、平等性を担保するということです。

たとえば、応募学生が5名(Aさん~Eさん)いたとしましょう。本来なら全員に「自己PRしてください」と質問すべきところですが、Dさんだけに「あなたを動物に例えると何ですか?」と聞いたとします。そうすると、Dさんはどのような気持ちになるでしょうか。おそらく違和感を覚え、貴社の面接に対する満足度を下げてしまうことになりかねないでしょう。まずは、平等性を担保しておくことが大事です。

では、そのような集団面接では、どのようなところを見ていけばよいのでしょうか。私どもは、以下3つのポイントがあると考えます。

①第一印象

集団面接は、個別面接に進む学生を選び出すために行います。ここでひとりひとりの学生の話をじっくり聞いていては、いくら時間があっても足りません。仮に1名30分×5名だとして、150分。それゆえに、どうしても、1名当たりの時間を短くして、一問一答式の質問にして、短時間で効率よく情報収集していく必要があります。

そのような制限の下、まず確認しておきたいのは、第一印象です。具体的にいうと、お客様の前に出しても恥ずかしくないかどうかということです。第一印象が悪いために取引先から嫌われて仕事をいただけない、そうすると、貴社に成果貢献できない…という可能性が出てきます。

②話の論理性

一言で言うと、結論から話せているかどうかです。

ビジネスの場面では、短時間で上司や顧客に情報を伝える必要があるため、結論から話すということが求められます。この短時間の面接の中で、どれだけわかりやすく話せているか、情報提供できるのかを、集団面接を通じて見ていくことができるでしょう。

③志望強度の高さ

横一列に学生を並べて比較する集団面接では、貴社に入社したいという気持ちが、どれだけ強く現れているかどうかについて、一度に確認することができます。

ひょっとしたら、必ずしも第一志望ではなく、練習で受けている学生もいるかもしれません。それはそれで構いませんが、やはり「御社に入社したい」という学生に来てほしいと思うのが、人情ではないでしょうか。集団面接では、そのような点も踏まえるとよいのではないかと思います。

また、集団面接と並んで、選考の初期階層で用いられるのが、グループディスカッション(集団討論)です。

学生の”素”が垣間見えるグループディスカッション

グループディスカッションは、一つのテーブルに4名~8名程度の学生に座ってもらい、制限時間内で企業側が与えるお題について話し合ってもらって結論を出していくというものです。制限時間は10分~120分程度とさまざまですが、だいたい20分~60分程度が標準的ではないでしょうか。

企業側にとって、グループディスカッション選考を実施するメリットは、以下3つあります。

①一度に多くの人数を見るため、次の選考に進む学生を効率よく絞り込める

②対人コミュニケーション能力を見ることができる

③課題解決能力を見ることができる

特に②については、応募書類で「コミュニケーション力に自信があります」と書いていた学生が、グループディスカッションの場になると、実は人見知りだった…という例は、多く聞かれます。ここで確認できるポイントは、ズバリ、社会性です。

社会性=周りと円滑な人間関係を築けるかどうか

社会性とは、周りの人たちと円滑な人間関係を築けるかどうかを指します。つまり、最後まで人の話を聞けるか、主体的に議論に参加しているかどうかなど、人としての基本的な部分ができているかどうかということです。

特にグループディスカッションだと、そうした社会性を見抜くことが可能となります。

グループディスカッションで、あまり積極的に議論に参加できない学生は、貴社の会議や取引先との打ち合わせに出たとしても、主体性に欠けると考えるのが自然ではないでしょうか。そうした学生を選び出さない、という点でも、グループディスカッションは有効だと思います。

そして、お題には、大きく分けて以下の2パターンがあります。

①課題解決型

(例)「日本中から傘の忘れ物をなくすにはどうすればいいか」「コンビニの売上を上げるにはどうすればいいか」など、実務的な内容が中心

②対立葛藤型:いわゆる、賛成か反対か、イエスかノーか、といった感じで考えが二分されるもの

(例)「消費税増税に賛成か反対か」「ゆとり教育は是か非か」など

なお、お題の選択にあたっては、政治的・宗教的な色合いの強いものは、避けたほうがよさそうです。

また、事前の準備をしておくことをおすすめいたします。当日の段取りが悪いと、応募学生の満足度を下げることにつながってしまいます。

ここまでの選考ですと、だいぶ人数が絞られているはずです。引き続き応募学生の絞り込みを行うわけですが、次の階層で、ようやく個別面接が出てきます。

個別面接では「能力の再現可能性」を見る

個別面接では、応募学生ひとりひとりに会って、直接話を聞いたり質問したりするものです。標準的な面接の時間は30分~60分程度です。集団面接やグループディスカッションでは、どちらかといえば、印象面に重きを置いた選考となりましたが、いよいよ個別に学生を呼んで、じっくり話を聞くことになります。

ここで確認すべきは「能力の再現可能性」です。

「能力の再現可能性」とは、学生時代にがんばってきた経験やそこで培った能力を、そのまま自社でも発揮してくれるかどうかを、面接を通じて確認していくものです。

例えば、応募学生に対し、過去の経験について簡単な情報収集したうえで、このような感じで「能力の再現可能性」を確認していきます。

「集団でのあなたの役割は何だったのですか?」

「どんな課題や困難があったのですか?」

「実際にどのような行動を取ったのか、教えていただけますか?」

「困難を乗り越えるうえで、工夫したことや心掛けたことはありますか?」

「この経験から何を得ましたか?もしくは、身に付いた能力にはどのようなものがありますか?」

などといった具合です。詳しい内容は、1をご参照ください。

いよいよ次は最終面接です。ここまで応募学生を選別していると、どの学生を採用しても、おかしくないレベルですし、成果を出せそうな人材だと思います。もはや”どんぐりの背比べ”でしょうか。そうすると、この先は、役員クラスに判断を委ねた方が好ましいと思います。

最終面接では、経営者層が「価値観に合うかどうか」を判断する

最終面接の面接官は、経営者、具体的にいえば、社長、専務など取締役クラスです。彼らの仕事は採用ではなく、企業の経営です。経営者は、常に5年後、10年後先を見据え、会社の舵取りを行っていきます。いわば、船の船長やバスの運転士のような存在です。

もはやこの段階にくると、選考の基準は、「同じ未来を目指せるかどうか」「自社の価値観に合った人材かどうか」になってきます。つまり、誰を同じ行き先の船やバスに乗せるか?ということになります。

逆にいうと、方向性や”行き先”がずれていると、お互いにとって不幸せな採用になってしまいます。そう、せっかく採用した人材が「やっぱり合わない」ということで、会社を去ってしまう確率が高くなってしまうのです。企業の価値観と応募学生の価値観のマッチングを意識して行うと、失敗が少なくなるでしょう。

ここまで、それぞれの階層で、どのようなところを見ていけば、よりよい採用につながるかを見ていきました。今回のコラムが、貴社のよりよい人材の獲得に貢献できれば、うれしく思います。

大変長くなりましたが、今回もお読みいただきありがとうございました。また来週、連休明けにお目にかかりましょう。