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2019.02.04 COLUMN

採用の現場にも「一芸入社」の時代が到来?

一年で最も寒いのが2月です。この時期はちょうど私立大学の一般入試がはじまるころで、受験生のみなさんは、きょうこの瞬間も目の前の入試に挑み続けていることでしょう。

入試といえば、ここ十数年で「AO入試」「一芸入試」というのが浸透してきました。弊社が運営する「就勝ゼミナール」にも、「AO入試」で大学に入学したという学生が、一定数います。

そんな「一芸入試」ならぬ「一芸入社」の波が、採用の現場にも押し寄せているようです。

「画一的な採用」の限界

損害保険大手の損保ジャパン日本興亜は、2019年卒採用から「一芸採用」を始めたようです。人事部のグループリーダーである福元利一さんは、インタビューの中でこう述べています。

「当社は今まで、どちらかというと画一的な採用でした。その必要もあったわけですが、フィンテックの台頭などで金融業界全体が変わっていくなか、柔軟な発想も必要だという議論もありました。とっぴなことはしませんが、今までと違った面から学生を見れば、少し変化が起きるのではないかと考え、試してみたというのが現状です」(2018年9月26日付NIKKEI STYLEの記事より)

また、いわゆる「五大商社」の一角である伊藤忠商事の岡藤正広会長も、インタビューの中でこう述べています。

とにかく商品のプロにならなきゃいけない。ゼネラリストというのはやっぱりね、中途半端で使い物にならない。その道のプロになり、ある程度の水準になってから、いろんなことを経験したほうがいい。

「まずは一芸に秀でることが大事」というのが僕の考え。商社は今までそのようにしてきたと思うんです。

でも、1カ所にずっとおると問題も出てくるのでローテーションで動かす。しかし動かし過ぎると、中途半端な人材にしか育たない。

だから多少リスクがあっても十数年は一つの道で鍛える。種をまいてしっかり根付く前に、しょっちゅう別の鉢に植え替えとったら、ちゃんと育たないでしょ。ある程度根付くまではそのまま置いておいて、植え替えはその後でというようにせなあかん。(2018年11月14日付「東洋経済オンライン」の記事より)

変化の激しい時代、今までと同じような人材の採用だと、行き詰まりを見せているのかもしれません。この点に関しては、2018年10月22日付の当コラムでも触れておりますので、是非ご一読いただければ幸いです。

また、外国籍の人や時短勤務の人らとも働くことが当たり前になり、ダイバーシティの概念が浸透しつつある昨今、「特定の分野に秀でた人」の確保が、重要になってくるのではないかと考えられます。

ただ、一芸に秀でた人を誰でも採用していいのかと言われれば、必ずしもそうであるとは言い切れません。

「採用の基本」に忠実に

たとえば、野球の全国大会に出場して「全国大会で優勝しました」という学生が面接にやってきたとしましょう。

もちろん、全国大会で優勝したというのは、それはそれで大変立派なことだと思います。

しかしながら、実際に成果を出せる人物であるかどうかは、学生の過去の経験(=行動、プロセス)を聞かなかれば、未知数の部分があるのではないでしょうか。「全国大会で優勝しました」という「結果の大きさ」に引っ張られて、採用に失敗するケースが往々にしてあると聞きます。

たとえ「一芸入社」であっても、やはり、ここは成果を出すまでのプロセス、すなわち過去の経験や行動を掘り下げて聞き、「能力の再現可能性」を確認するという、採用の基本に忠実でありたいものです。

本日もお読みいただき、ありがとうございました。また来週、お目にかかりましょう。