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2020.10.21 COLUMN

「業務遂行能力」をベースとした人事評価制度と在宅勤務/テレワークについて考える

昨日からの続きで、勤務態度や部下のモチベーション・メンタルは、どこまで人事評価に反映するべきなのかという点から考えていきましょう。

日本で長く雇用制度と賃金制度を支えてきたのは、「業務遂行能力」をベースとした能力評価や行動評価といった人事評価制度と、それに基づく職能給制度です。

新卒採用から、ジョブローテーションを繰り返して徐々に成長を続ける中で、仕事の目的に対するプロセスや取り組む姿勢と成長、何より企業にどのように寄与できる人材であるかをジャッジする仕組みは、まさに「人」そのものを評価するというものでした。

その一方で、在宅勤務/テレワークの定着は、その内在的な問題点を浮き彫りにします。

能力評価・行動評価では、現実的には、思考の特徴、会話、長所や短所など、勤務中だけでなく、雑談中や場合によっては懇親会など業務外を含めて観察し、成果だけではなく、言葉以外の情報や業務以外のスキルや能力も含めて評価します。
(結果、上司部下の相性やチーム内の立ち位置、目立ち方などの印象によって人事評価にも影響が出ることもある)

ですが、在宅勤務/テレワークが前提となると、人事評価に必要な情報が断片的となってしまいますし、仮に在宅勤務/テレワークの定着以前から在籍していた従業員と、在宅勤務/テレワーク後に異動してきた従業員だと同列に評価しづらくなります。

そのため、この観点で現在の人事評価制度や運用の仕組みについて、不足や改善点がないかを検討することがまずは必要かと考えられます。

例えば、人事評価の項目の中で、「在宅勤務/テレワークでは十分に察知しえない要素を含んだ項目」や「在宅/テレワークの定着以前から在籍していた従業員とそれ以後配属の従業員でどうしても差異が発生する恐れがある項目」がないか検討してみましょう。そういった項目があった場合は評価項目から外す、もしくはウェイトを下げるなどの変更をしてみてはいかがでしょうか。

人事評価制度の運用見直しで部門コミュニケーションを増やす

在宅勤務/テレワークによる最大の変化とは、周りに人がいないことが原因で主体的・自発的なコミュニケーションが必要となる、という点にあると考えられます。

では、主体的・自発的なコミュニケーションを取ることができないと、どういったリスクがあるのでしょうか。

従業員のパフォーマンス・モチベーション低下のリスク

・目的に対する成果のプロセスやアウトプットが誰にも見えない(見えにくい)
・困っていても周囲が助けにくい
・自己の成長や周囲とのギャップに気づくことが少ない
・管理職は自身の指示を徹底できず、メンバーが混乱してしまう
上記のような問題点が発生する可能性があり、個人も組織もパフォーマンスを発揮することができなくなってしまいます。

また、一般的には在宅勤務/テレワークの定着以前よりも、従業員が孤立するリスクがあるため、パフォーマンスの低下やモチベーション低下につながることが想定されます。

これを防ぐためには、対応を現場や管理職だけに任せず、会社としてあるいは人事部門としての検討が必要かと思いますが、そのために人事評価制度や運用の見直しで実現できることはないでしょうか。

人事評価制度変更だけでは解決につながらない

なお、こういった問題点を解決するために、目標管理制度の導入や成果主義の強化、ジョブ型雇用への転換、といった議論も散見されますが、

・目標管理制度はすでに70%程度の企業で実施済み
・成果項目のウェイトを上げても、成果を出すまでのプロセスにおいて、従業員の孤立やモチベーション維持などの解消は必要
・ジョブ型雇用は「職務に人をつける」雇用制度であって、本来の人事評価制度とは全く関係がない
(職務記述書に記載された業務が達成されたかどうか、なのでジョブ型雇用が実施可能であれば上記の問題はそもそも存在しえない)

など、ただ制度を変更するだけでは、本質的な解決につながらないと思われます。