【同一労働同一賃金を解説】メトロコマース事件の内容とは
有期契約社員に退職金を支給しないことの合理性を争う裁判です。
労働者側の主張根拠は旧労契法20条(現パ有法8条) 。
一審では不合理と認めなかったが、一転、高裁では「正社員の4分の1すら支給しないのは不合理」と判断しました。
しかし、最高裁では逆転判決となり、「不合理な格差とは認められない」としました。
事件の概要
本件は、第1審被告と期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結して地下鉄の駅構内の売店における販売業務に従事していた第1審原告らが、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している労働者(正社員)のうち上記販売業務に従事している者と第1審原告らとの間で、退職金等に相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)に違反するものであったと主張して、第1審被告に対し,不法行為等に基づき、上記相違に係る退職金に相当する額等の損害賠償等を求める事案である。
原判決及び争点
原判決(東京高裁)は、退職金の支給の有無に関する労働条件の相違について、第1審原告らの長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分に係る退職金、具体的には正社員と同一の基準に基づいて算定した額の4分の1に相当する額すら一切支給しないことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)にいう不合理と認められるものに当たるとして、上記相違に係る損害賠償請求の一部を認容した。
本件における争点は、退職金の支給の有無に関する労働条件の相違が、労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)にいう不合理と認められるものに当たるか否かである。
最高裁判決
判決理由
判決理由としては
・退職金は、職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有するものであり、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から、様々な部署等で継続的に就労することが期待される正社員に対し支給するもの |
その上で
・職務内容→一定の相違がある(正社員は複数の売店を統括し、サポートやトラブル処理などに従事することがあるが、契約社員は売店業務に専従し、一定の違いがあったことは否定できない) ・変更の範囲→一定の相違がある(配置転換も命じられない) ・正社員への登用制度もある |
といった事情から不合理とはいえない。
というものです。
高裁判決においては、長年の功労報奨の性格を有する退職金を契約社員には一切支給しない事は不合理であるとして、正社員の4分の1相当の退職金の支払いを認めていました(4分の1相当とした根拠は疑問が残るという評価が多かった)。
最高裁では、この判断を覆し、「様々な部署等で継続的に就労することが期待される正社員に対し支給するもの」と評価し、退職金の支給の有無に係る労働条件の相違は不合理とまではいえない、としました。