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2020.07.01 COLUMN

求める人材像の変化は会社の成長の証

社会が変われば…

今、社会の様相を表現する言葉としては、「VUCA」が最も知られていると思います。

ご存じの通り、企業を取り巻く市場環境が、不安定で変化が激しく(Volatility)、先が読めず不確実性が高い(Uncertainty)、かつ複雑で(Complexity) 曖昧模糊としている(Ambiguity) ということを指しています。

そのような状況の中、配車サービスの「Uber」や民泊サービスの「Airbnb」が成功事例としてよく取り上げられることも、皆さんご存じの通りです。

こうした情報は理解しつつも、自社の採用や育成の枠組みにまで影響を与えているかというと、そこまでは至らないという企業がほとんどだと思います。

こうした現状は、ややもすると採用チームが打ち出す「求める人材像」が社会の変化に後れを取る事態を招くのではないかと危惧しています。

もう少し身近なところで考えてみましょう。

今年日本では5Gの通信規格が実用化されました。 5Gはご存じの通り、次世代の無線通信システムで、現在主流の4Gと比べると速度は100倍と言われています。

5Gが普及することで、車の自動運転を筆頭に、IoT(あらゆるモノをインターネットにつなげて実現するサービス)がさらに進化します。ビッグデータの構築にも拍車がかかり、AIの利用法も格段に進展をもたらします。様々な利用場面で、今までの常識を覆すでしょう。

こちらは、政府が打ち出している「ソサエティ5.0」を紹介しているウェブサイトです。 「ソサエティ5.0」は、政府が提唱している少し先の未来社会の姿です。
「あなたの暮らしや働き方が変わる」様子を、わかりやすく紹介しています。

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

「こんな風な暮らしや働き方がもうすぐ実現しそうなのに、自社の採用や育成の枠組みに何も影響を与えない?そんなことはないのではないか…」そう感じていただけるのではないかと思います。

では、そのような時代に求められる人材像をどのように考えていけばよいでしょうか?

時代が求める人材像

ソサエティ5.0では、ビッグデータを踏まえたAIやロボットが、これまで人間が行っていた作業や調整を代行・支援するため、日々の煩雑で不得手な作業などから解放されると説明しています。

文面通りに受け取り過ぎてはいけませんが、(どんなに煩雑であっても)ルール化に成功した仕事は自動化され、人間の手元から無くなっていくでしょう。

そしてそれは、今採用した人材が一人前に育成される5年後、10年後には、ずいぶん進んでいる可能性が高いと言えます。

では、そのような時代に求められる人材像をどのように考えていけばよいでしょう。

社会の変化によって明らかに重要視されるようになる能力を3つ記していきたいと思います。

専門性(学べる・学び続けることができる・学び直すことができる)

1つ目は、ゴール逆算型ではなく、ゴールが見えない(もしくは解がない)状況下で、変化に応じて知識を学び直し、活用する力です。

これから多くの仕事の進め方は、ゴールまでのステップを区切り順序良く進めていく「ウォーターフォール型」ではなくなっていきます(もうそうではない企業も多いと思います)。

これでは、変化に対応できないからです。 ゴールは変わってしまうことを前提に、まずその時点のベストでの解を出し、それでどこまで行けるのか確かめつつ、ゴールに近づいたらそのゴールを見直しながら進む、いわゆるアジャイル型の進め方が増えるでしょう。

そうした状況下では、求められる専門性についても変化を前提に学び続けたり、柔軟に学び直したりすることが求められます。

今まで、採用活動において、専門性の獲得については、メッセージしていない企業も多いのではないかと思います。

今後は当然、就職活動をするほうも、そのような支援に関する興味が高まっていくと思います。

共創(協働できる・自分の専門性を他領域の課題に活用できる・他者の専門性を自領域の課題に活用できる)

2つ目は、共創する力です。

ビジネスは、成長市場をいち早く見つけて参入し、いかに生産性を最大化するかではなく、(UberやAirbnbのように)技術の進化をうまく取り込んで創造性を高め、自ら市場を掘り起こすことが重要になっています。

そのように市場を掘り起こす、つまり事業を構想していくためには、多様な分野の専門人材が共創することが重要です。

これは、「専門性がない領域の課題(解が定まっていない課題)に対して、それぞれ何かの専門性を人材が持ち寄りコラボレーションして、新領域の専門性を共同で構築していくプロセス」だと言えます。

つまり個人レベルでは、「他者の多様性を受け入れ、そこから新たな洞察を得て、自分にとって新しい課題に適用できる」といった、共創によって自らを進化させる能力が求められていると言えます。

多くの企業はこれまで、チームワークというレベルで、共同作業に耐え得る人材像を掲げてきたと思います。

他者に配慮できる、会話がスムーズに成立するというレベルから、さらに質の高いメッセージをする段階に来ていると思います。

人中心(利用者の立場に立てる・利用者の気持ちを考えられる・利用者の問題を発見し課題を整理できる)

3つ目は、人を中心に考える力です。

イノベーションに関するナレッジで注目されているある企業では、イノベーション実現の要素には、Viability(ビジネス化)、Desirability(人間中心)、Feasibility(技術)の3つが大切だと紹介していますが、必ずスタートは「人間中心」であると述べています。

顧客視点で考えることは、もちろんさほど新しい考え方ではありません。 ただ、この数年で、モノからコトへの重心の移動が著しいと感じています。

ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく「穴」であるという、アメリカの学者レビットがマーケティングを解く本の中で紹介した話を聞いたことがある人もいると思います。

顧客の問題解決でも、モノに重心を置けば、私たちのビジネスは高性能で安いドリルの開発製造に向かうでしょう。

一方で、コトに重心を置けば、その人があけたい「穴」に対する解決策に向かいます。「どうやって穴をあけるか」という問いへの解答は、ドリルを売らない新しいビジネスに向かうかもしれません。

つまりここで、モノとコトの発想を分けるのは、問いの立て方だと思います。

とかく、問題解決の手続きを知っていたり、論理性が高かったりすると高評価につながる観点ですが、今後はより、人の感情や期待に寄り添う形で「問いを立てる」力が求められていると思います。

いかがでしょうか。 もちろん、求める人材像はすべての企業が同じ観点・表現になるものではありません。
一方で、こうした環境要因は、多くの企業に共通するもので、同じベクトルの変化を促す要因だと思います。

採用活動の内容も変化が予想され、求める人材像についても改めて検討が必要になると思います。 今日お話しした観点以外に、何が普遍であるのかといった議論も必要でしょう。

このテーマでは、当コラムで書き切れないことが多々あるのも正直なところですが、新しい求める人材像の検討のきっかけやヒントになれば幸いです。