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2020.10.16 COLUMN

【同一労働同一賃金を解説】大阪医科薬科大事件の内容とは

パートの有期契約社員に賞与を支給しないことの合理性を争う裁判です。

労働者側の主張根拠はやはり旧労契法20条(現パ有法8条) 。

一審では不合理と認めなかったが、一転、高裁では「同時期に新規採用された正職員の支給基準の60%を下回る部分は不合理」と判断しました。

その後、最高裁で「フルタイムのアルバイト職員へのボーナス不支給は不合理な格差と認めない」という判断が示され、労働者側の逆転敗訴となりました。

原判決及び争点

原判決(大阪高裁)は、①賞与の支給の有無に関する労働条件の相違について、第1審原告と同時期に新規採用された正職員の支給基準の60%を下回る部分は労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)にいう不合理と認められるものに当たり、②業務外の疾病による欠勤中の賃金の支給の有無に関する労働条件の相違について、欠勤中の賃金(正職員には、6か月間,給料月額の全額が支払われる。)のうち給料1か月分及び休職給(正職員には、上記6か月間の経過後、休職が命ぜられた上で標準給与の2割が支払われる。)のうち2か月分を下回る部分は同条にいう不合理と認められるものに当たるとして,これらに係る損害賠償請求の一部を認容した。

事件の概要

本件は、第1審被告と期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結して勤務していた時給制のアルバイト職員である第1審原告が,期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している労働者(正職員)との間で,賞与及び業務外の疾病による欠勤中の賃金が正職員に支給される一方で、第1審原告には支給されないなどの相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)に違反するものであったと主張して、第1審被告に対し、不法行為に基づき、上記相違に係る賃金に相当する額等の損害賠償を求める事案である。

最高裁判決

結論としては、冒頭に上げたとおりです。

無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされました。

 

判決理由

判決理由としては

・賞与は、財務状況を考慮しつつ支給され、賃金後払い、功労報奨的な趣旨を含む。そして、正職員の賃金体系や求められる職務遂行能力及び責任の程度等に照らせば、賞与は、正職員としての職務を遂行できる人材を確保し、定着を図る目的で支給している

その上で

・職務内容→一定の相違がある(正規の職員は業務内容の難易度が高い)
・変更の範囲→相違がある(正規の職員は人材の育成や活用のために人事異動も行われている。アルバイトは原則ない)
・その他の事情→正社員への登用制度もある

といった事情から不合理とはいえない。

という内容でした。

賞与の性質を「就労していたことそれ自体に対する対価」とした高裁の立場を取りませんでした。

賞与の支給目的が争点。

賞与は基本給×4.6か月分。業績に連動しない。

高裁では「就労そのものに対する対価」→労働者側勝訴
最高裁では「正職員としての職務を遂行できる人材を確保し、定着を図る」→労働者側敗訴

最高裁では、ベースになっている基本給自体が職能給の性格を持つ→正職員の職務を行うには高い能力が必要→基本給をベースにする賞与も正社員相当の職務能力を有する人材に支給するもの、という論理展開。