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2020.10.13 COLUMN

コロナで変わる働き方と人事制度Vol.02『ジョブ型が生む「自分の仕事以外はしない」という意識』

ジョブ型が生む「自分の仕事以外はしない」という意識

前回お伝えしたジョブディスクリプションですが、これには担当する職務が細かく列記されます。例えば、受付業務であれば、来訪者の対応、電話対応、案内などです。これらはポジティブリスト、つまり、してよいこと、しなければならないことが記載されるという方法です。逆に言えば、それ以外のことはしなくてよいということになります。

職務を明確にするということは、自分の仕事以外はしないという職場を形成することつながりやすくなります。仕事にはいわゆる隙間の仕事というのがありますが、これは誰もやらないか、一部の人の自主的な負担になってしまいかねません。

これについて許容できるかどうかが一つの判断ポイントになるでしょう。職務を明確にしてもお互いに協力してチームを動かしていこうとすれば、リーダーに相当なマネジメント力が必要になりますし、どのようなチームでありたいかをチームで共有していなければ、自分の仕事だけをするチームになってしまいかねません。ただ、自分の仕事だけをしていると、効率が上がるという見方もできます。人間は効率が大好きです。

しかしながら、効率が上がるから、効果があるのかは別だという認識も重要です。効率がよいことが必ずしも、効果が出ていることとは限りません。これを混同している人も少なくありません。

ジョブ型と成果の関係

また、ジョブディスクリプションは担当業務を列記するだけでなく、必ずその仕事の目的、役割、求められる成果を最初に記載しておく必要があります。そうしなければ、担当者は仕事をこなすことにしか目が行かなくなります。目的、役割、成果を記載しておくことが重要ポイントです。

しかしながら、現実にはどの仕事にもすごい成果が求められているとは限りません。

例えば、経理の日計処理担当のジョブディスクリプションを作るとします。さて、日計処理担当の“成果”をあえて言えば、どうなるでしょうか。恐らく、「ミスなく、早く処理する」といったことになるでしょう。この成果の出来栄えで評価するとすれば、ミスが何件あったか、時間内の処理件数は何件だったかということになりますが、率直に言って、企業経営に重要な影響を与える成果だとは考えられません。

実際、日計処理は大事な仕事ですが、成果の価値としてはそれほど大きくないでしょう。ジョブ型雇用では、そのジョブの価値に対して給料を支払うということが明確ですから、この例でいえば、日計処理業務は給料〇〇万円、という設定がされ、仕事が変わらない限り昇給もないということになります。

これはこれで非常にシンプルではっきりした仕組みだといえますが、日本の企業でこれを従業員に突き付けられる企業がどれほどあるでしょうか。

ジョブ型を導入する場合は、企業側にはこの覚悟が必要です。

もし「あなたの担当職務はそれほど重要な成果は求められないので、給料はこうです」と説明したら、「一生懸命頑張っているんです! あなたは私の仕事を大した仕事じゃないっていうんですね!」という声が返ってきそうです。はっきりと「そうです。大した仕事じゃありません。」といえる覚悟が必要ですね。

ただ、加えてより価値が高い仕事とその要件を提示することも重要です。つまり、価値が高い仕事に就くかどうかは本人の選択と能力によるということになるわけです。

次回は、「ジョブ型チーム」のマネジメントに触れていきたいと思います。