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2020.09.30 COLUMN

総務・経理部門はどう評価する?「人事評価基準」を明確にする方法

総務・経理部門など間接部門の目標設定方法

役割成果において、営業部門等の比較的数字目標を設定しやすい部門はいいでしょうが、数字目標を設定しにくい総務・経理部門など間接部門では、最初はかなり設定に戸惑うかもしれません。

 

そこで、間接部門はもちろん、直接部門を含めて自部門の役割を考えることによって、役割成果が出やすくなります。それは、次の視点で検討することがヒントになります。

 

「あなたの部門がなくなったら、誰がどのように困りますか?」

 

この問いに答えることで、自部門の役割がはっきりとしてきます。たとえば、総務経理であれば、もし総務経理がなくなったら誰が困るかです。「毎月の給与を払えなくなる」「毎月の試算表が出なくなる」「人の採用ができなくなる」「社員教育の計画とその実行ができなくなる」「社員の評価の手続きができなくなる」など・・・。

 

経営を揺るがす根幹的な問題が生じます。それをもとに、以下のように部門の役割を検討します。製造業K社の事例です。

 

【K社部門の役割の例】

□営業部門:会社のブランド、商品サービスを取引先にPRし、取引、回収、継続受注する。

□製造、技術部門:顧客に喜ばれる品質、適正価格で製品を作り続けること、また市場や顧客のニーズに合ったサービスを開発および提供し続ける。

□管理部門:会社と社員を共に元気にするために、人とお金の両面を効果的に活用して、会社の業績アップに貢献する。

 

次に数値設定をしにくい管理部門の役割をもとに、実際にどうやって社員チャレンジシートを作っていくのかを以下に説明します。作成のステップは次の2点です。

 

①管理部門で実際にやっている・やるべき業務を整理する。

②どの階層で各業務における実行責任者なのか、実務担当者なのかを明確にする(図表1)。

 

[図表1]K社管理部門の担当業務表

[図表1]K社管理部門の担当業務表

 

まず、図表1について説明しましょう。

 

この表はK社の管理部門が、①実際に担当している業務を洗い出し、②今一度、部門の役割に立ち返って不足していたと考える業務を追加したものです。表の(*)の部分が追加検討した一部です。

 

(*1)から(*5)に関しては、単に担当者がやっているだけで、チェック、改善などの全社的視点がありませんでした。また(*6)の売上・利益計算も事務担当者任せで集計しているのみで、それに対して他部門へ収支改善を積極的に働きかけていませんでした。それも踏まえて、③各々の業務を、初級・中級・上級の各階層の社員が何を主に担当すべきかを見える化しました。◎、○、△で表し、以下のように定義しました。

 

◎:「実行責任者」その階層が実行の職責(責任)を負うべきもの

〇:「主担当」実行責任者の指示や要請によって実行すべきもの(実務担当者)

△:「場合によって実行」人員不足(急な担当者欠員、休暇・欠勤等)の場合に実行・補助すべきもの

 

さて、この定義にはもう一つの「想い」も込められています。

 

多くの中小企業では、人財役割責任等級基準を定めても、実際の個人の業務では初級・中級・上級の階層枠をまたいで実行していることがほとんどです。人手不足等のさまざまな要因で、プレーイングマネージャーとして一人二役・三役をこなしている管理・監督職が多いのも実態です。

 

そのような背景のもとで、杓子定規な業務分担表を作ってしまうと、多忙な日々の中でついつい「これさえやればいいんだ」となってしまい、本末転倒になってしまう恐れがあります。

 

そこで「実行責任者」が、その階層が絶対的に責任を負うべきことを明確にします。そうはいっても、「主担当」「場合によって実行」に該当する者が業務支援や補助をする必要があるということを、会社の意思として定義しておくのです。◎〇△ではなく、階層別の業務優先度(順位)付けをして、多種類の業務を担ってもらう必要性を示している企業もあります。

 

図表1と「人財役割責任等級基準」「部門の役割」「部門目標」を確認することによって、個人の社員チャレンジシート上の項目(役割成果、重点プロセス業務、チャレンジ目標)への記入内容の絞り込みをしやすくすることが、この表を作成する目的(狙い)となります。

 

図表2は、「役割等級基準」「部門の役割」「部門目標」「担当業務表」をもとに、各階層が記入した社員チャレンジシート項目の記入事例です。

 

[図表7]K社管理部門の社員チャレンジシート 各項目への記入事例

[図表2]K社管理部門の社員チャレンジシート 各項目への記入事例

 

役割成果欄には、①数値目標、②状態目標、③スケジュール目標で目指すことが記入されています。このように書くことで、評価する側・される側双方の検証(PDCAの中の「C」)ができます。

 

重点プロセス業務欄では、役割成果を達成するための重点業務内容が具体的に記入されています。チャレンジ目標欄では、①一つ以上高い等級の主担当業務に挑戦、②現在の担当業務の質やスピードをより高めるための挑戦事項が記入されています。

 

取り組み姿勢欄では、会社として初級・中級には「積極性」「責任性」「規律性」「協調性」を求め、各自が具体的にどんな行動をとるのかを記入してもらいます。上級には「積極性」「責任性」「協調性」に加えて、「人間性」を求めています。この会社では、管理職には人間性を磨き、部下の納得性を高める行動を望んでいます。

 

いかがでしょうか。以上の考え方と事例を参考にすれば、記入にあたっての戸惑いはかなり軽減されるのではないでしょうか。