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2020.06.26 COLUMN

ベテラン社員に対する基本スタンスとは(1)

長幼の序を心得、尊敬の念を示す

「役割の上下が人間の上下ではない。」

仕事上の役割は上かもしれないが、それが人間の優越を決めるものではないので、勘違いをせずに謙虚な気持ちを持って部下と仕事をしましょう、という意味です。

この考え方は仮に、部下であるベテラン社員より能力面で優秀であったとしても大切な考え方です。仕事はほどほどであったとしても、プライベートでは地域に多大な貢献をしているかもしれませんし、家庭では素晴らしい親かもしれません。仕事における能力だけで人間の優劣を決めて、ベテラン社員に上から目線で物を言うのは恥ずかしいことです。

労働における価値観も多様化しています。仕事ができたとしても昇進を望まないベテラン社員もいるでしょう。仕事上の能力すらベテラン社員よりも優れていない若手が昇進してしまうことがあり得ます。

長幼の序。失われつつある価値観ですが、反比例する形で、今後ますます必要になってくるでしょう。

ベテランに対して安易に成長を促さない

若手管理職から見たときに、全くモチベーションのないベテラン社員や、成長が止まってしまっているベテラン社員もいるかもしれません。

「自分より歳上なのに何だ!」と不満に思うこともあるでしょう。

私自身、人間力が低いのか、自分より経験豊富な先輩社員がだらしない言動をしていると、許せない気持ちを持ってしまうことがあります。立てて欲しいのであれば、それだけの理由を作って欲しいと。

だからといって上司風を吹かせて、安易にベテラン社員に対して成長を促したりしてはいけません。

何事も想像力が大切です。自分よりも10歳の20歳も離れた若い人間から、「モチベーション上げろ!もっと成長しろ!」と言われてやる気になる人間がどれだけいるでしょうか。

先日ある研修で参加者から頂いた質問です。

その参加者の方は、65歳の定年を終えて再雇用で会社に採用されたベテランで、確か67歳だったと思います。

「質問してもいいですか?私はまだ成長しないといけないのでしょうか?」

その方は冗談のつもりで発言されましたので、その場では大きなお笑いが起こりましたが、あながち笑いごとでもないように感じています。

というのも、ベテラン社員としては定年で退職したいと言う意向を持っていたとしても、会社側がそれでは困ると言って引き止めるケースもかなり増えてきているからです。

他にも様々な事情で今のポジションにいるのです。会社のためにと思って頑張っているベテラン社員に対して、モチベーションが低いのはおかしいんじゃないか!等と安易に指摘するとモチベーションが下がってしまうので注意が必要です。

また、この種のコミュニケーションは相手の尊厳を傷つけるため、取り返しがきかないことが多いです。尊厳はモチベーションの大前提にあるものですから、小手先のモチベーション向上テクニックに走る前に、よく考えておきたいところです。

そのベテラン社員に合った役割を演じるよう丁寧に依頼する

ミーティングで管理職とベテラン社員の意見が食い違ってしまい、収集がつかなくなる。こうした場面に遭遇したことがある人は多いのではないでしょうか。

ベテラン社員が若手管理職に対して反発をしてしまうのは、自分の居場所を感じることができていないからです。もっと自分の発言に敬意を示して欲しいという気持ちが少なからずあるものです。

一般的に考えて、ベテラン社員は若い社員よりもいろいろな経験をしていますから、自分なりの意見を持っていたとしても何ら不思議ではありません。

多くのベテランは、若手管理職に遠慮して発言を控えるようにしています。たまに、少しおせっかいな気持ちを働かせて良かれと思って発言したところ、議論が変な方向にいってしまう。管理職の邪魔をするつもりはなかったのですが、引っ込みがつかなくなり議論に及んでしまう。

ベテラン社員は、こうした失敗を何ともやりきれない気持ちで振り返ることになります。そして、次のミーティングでは発言をしなくなる。発言をしないから、周囲からモチベーションが低いと言われてしまう。もうふんだりけったりなわけです。

そんなベテラン社員の気持ちも知らず、若手管理職は若さ故にベテラン社員と真っ向から対決してしまいます。

そんなことを何度か繰り返すうちに、お互いの信頼関係が崩れていきます。そしてそれを横目で見ている他のチームメンバーがチームワークを感じることができなくなる。2人の人間関係の問題が、より大きな問題につながっていく。組織ではよく起こることです。

ベテランとの非生産的な議論をしないですむように、常日頃からチーム内でどのような役割を演じて欲しいのか、丁寧に依頼しておくことがポイントです。自分の対して敬意を持っている若手からの依頼は、断りにくいものです。

そのベテランの得意分野や長所を生かすことができるテーマで、何かしらのリーダーシップを発揮するよう依頼するのが良いでしょう。期待役割や管理職の意図に沿った発言であればチームにとって歓迎される内容になるでしょうし、ベテラン社員も自由に発言できるため、モチベーション向上につながるでしょう。

ベテラン社員の長所を探す

長所を探すことが大切だ。こうした意見に対して、「それはわかっていますが、そのベテラン社員には短所しかないんですよ。」という方がいます。モチベーションが低いベテランに対して、こうした気持ちを持ってしまうのも致し方ありませんが、一度冷静に考えてみてはどうでしょうか。

影があるのは、光があるからです。どんな物事にも両面がありますから、短所しか存在しないのではなく、短所しか見ようとしてないだけです。長所、短所は裏表の関係で、誰にでも存在する個性の形です。別の角度から見るようにしましょう。