危機を乗り越える、強い組織づくりとは? (2)
前回は有事を乗り越えるために喫緊で必要なことについてまとめさせていただきました。今回は有事を乗り越える際に必要な従業員教育についてまとめさせていただいています。
経営者と従業員の双方に必要な価値観の転換
リーマンショック以降の約10年はぬるま湯でも経営はなんとかなってきました。従業員も「やる気が出ない」「モチベーションが欲しい」と言っていても会社はクビにしないし、甘えていても大丈夫でした。
しかし、もうそんなことを言っている場合ではありません。
生きるか死ぬかのときに「やる気がないので……」などと言われて「わかった!やる気が出せるように少しずつ頑張ろう!!」などと言っている余裕はないのです。
経営者に必要な価値観の転換とは、『社員の「糧を稼ぐ」能力を高める』その環境を用意する。
一方で社員に必要な価値観の転換とは、その環境を活かし『自分で稼げる「足腰の強い」社員になる』ということです。
なぜなら経営者は、この先もずっと社員と一緒にいるとは限りません。
それなのに親鳥が雛にエサを運ぶようなことをしていては、親鳥がいざ離れたときに雛は生きていけません。必ず「独り立ち」させなければなりません。
だからこそ、社員には「糧を稼ぐ能力」を身につけさせることが重要なのです。今は景気後退局面です。こういう時にこそ、この事実をきちんと社員にも理解してもらい、真に「足腰の強い」社員になってもらう必要があるのです。
そして、それこそがアフターコロナという厳しい時代において求められることでもあります。
会社に借金しない従業員を増やせるか
賃金は、成果を出した、利益をもたらした、価値を生み出した「有益性」に対して支払われるものです。この原理原則はこれまでも、これからも変わりません。
しかし、景気が良い局面では、この仕組みが曖昧になってしまいます。曖昧にしてもなんとなく回っていくのです。本来は「有益性」に対して支払われるべき「賃金」が、有益性をそれほど生んでいない人に対しても支払われていました。そのため、組織内では不満が出たりするのです。
生み出した有益性以上に賃金をもらっていた人たちというのは、いわば「借金」をしていたのと同じです。会社に対して借りを作っていたわけです。
もし景気がこの先も好景気であれば、借金したまま逃げ切れる人も中にはいたかもしれません。しかしこうした経済危機というのは10年に1回くらいは必ずやってきます。そういうときに誰が借金をしていたかは、如実に現れます。
常日頃から「借金」をせずに、むしろ「貯金」をしながら働いていた人は、こういう危機的な状況になっても慌てていないでしょう。むしろ必要とされているはずです。
また、今回の事態によって、あらゆる場面でより「本質」を見られるようになっていきます。ごまかしがきかなくなってきています。つまり、成果でしか評価されなくなってくるということです。一人ひとりの状況に配慮などしてくれません。今回のようなときには、特にそれが如実に現れます。
社会は無慈悲で無機質なものです。しかし、それが本質です。
今後は、人事評価結果が成果に基づいた視点で見られ、それが処遇反映される可能性も多くあります。今期にすぐ反映させることは難しいかもしれませんが、アフターコロナでさらなる成長をするために今から新たな人事制度を検討してはいかがでしょうか。