危機を乗り越える、強い組織づくりとは? (1)
2020年4月7日の新型コロナウィルス感染症に対しての緊急事態宣言にはじまり、5月14日の緊急事態宣言の解除後も尚多くの企業におかれましては厳しい環境下での経営が求められています。
過去を振り返ると日本は多くの経済危機を乗り越えてきました。皆様の記憶にもあると思いますが、1991年のバブル崩壊、2008年のリーマンショックと約10年周期で経済恐慌が起こっています。そして、これら以外にも2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震といった震災被害により経済が大きなダメージを受けてきました。ただ、これらを乗り越えてきたのが今の日本です。
しかし、今回の新型コロナウィルス感染症の与えている影響は明らかに今までの経済危機とは規模と期間が桁違いであると考えられます。それでも私たちはこの危機を乗り越えていく必要があります。本記事では「危機を乗り越える、強い組織の在り方」としてマネジメントの視点についてまとめています。
有事の際の生存要件
有事の際には何よりも「現金」を持っていることが生存要件です。
つまり手元流動比率を高めるということです。手元流動比率は、緊急時の酸素ボンベとして捉えたら良いと思います。いざと言う時に使える「現金」という酸素がボンベ内にどれだけあるのかということです。
そのためにも資金繰り表を作成して、毎日の現金残高を日繰りで管理していく必要があります。これは、医師がまず聴診器を当て、患者の脈をとるのに近い作業とも言えます。
有事の際は、Excelなどの簡易なものでも良いのでまず整えましょう。そのうえで、経済危機が長引きそうな場合は、1年間くらいのキャッシュポジション・シミュレーションを複数用意し、随時アップデートしていくと望ましいです。
さらに、銀行や政策的に展開される融資や各種助成金は臆面もなく取りに行くべきです。有事においては、恥も外聞もなく使えるものは何でも使い、「現金」の手元流動比率を高くしていきましょう。
有事には「早い意思決定」と「丁寧なコミュニケーション」
有事の際には何よりも「早い意思決定」が必要です。なぜなら「あれも、これも、それも」とすべてを幸せにできる選択肢は存在しないからです。そのため、自社はどのような行動をとるのか?という点で「緊急度」「実行難易度」による優先順位を決断することが組織の大小に関わらずトップに求められてきます。そして、状況が変わったり、間違いに気づいたら即刻変更を決断することが求められます。ただ、そこで外してはならないことは、判断軸・価値基準としての“哲学”です。企業における“哲学”とは“企業理念”に相当します。自社が持つ価値観に基づきトップダウンで意思決定を早期に行い、関わるステークホルダーを安心させましょう。
そして、忘れてはならないことがあります。それは意思決定するだけでなく、部下から言動を注視されているということです。有事の時ほど部下は経営者や上司をよく見ています。だからこそ丁寧なコミュニケーションが求められます。この際に求められるのは「納得感」よりも「安心感」です。時間をかければかけるほど不安感を煽り、本来は効果がある取り組みも効果を発揮しなくなります。
元防衛大学校校長の土田国保氏の「平時は紳士たれ、有事は武人たれ」という言葉があります。今まさに求められていることではないでしょうか。有事の際は、自身が率先して見本・手本を示し追随者(協力者)を生み出す必要があります。お読みいただいている皆さんの周りには協力者がいるでしょうか。この機会にマネジメントスタイルを見直し、この危機を乗り越えていきましょう。
次回は今回の内容に引き続き、有事を乗り越える際に必要な従業員教育についてまとめさせていただきます。