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2019.11.18 COLUMN

「新卒採用」という言葉がなくなる?

ことし4月、いわゆる「就活ルール」を制定している日本経団連と大学側が、新卒採用における通年採用の拡大に合意するなど、「就活ルール」がもはや有名無実化しています(2019年10月30日付日本経済新聞電子版より)。これは今にはじまったことではありませんが、この流れに拍車がかかることはまちがいないでしょう。

そうすると、もはや「新卒一括採用」という言葉は、風前の灯といってもいいのかもしれません。とうとう「新卒採用」という言葉を使わない企業が出てきました。

IT系企業のガイアックスは、2021年卒採用より、新卒採用という言葉を使うことをやめるようです。具体的に言うと、新卒だけに絞った採用をやめるということだそうです。

ガイアックスの採用マネージャーである流拓巳氏は、以下のように述べています。

「募集要項などにも、◯年卒採用、新卒採用といった言葉は入れません。便宜的に(新卒を対象とした)就活サイトなどに求人は載せるかもしれません。ただ単に、採用活動で出会う方の中に、学生もいれば、そうでない人もいるだけに過ぎないのです」(2019年1月15日付BUSSINESS INSIDERより)。

企業にとって都合がよい!?

ちなみに、新卒も中途も同じ窓口で採用するそうです。これは企業にとって、好きなタイミングで自社に合った人材を採用できるというメリットがあるでしょう。

一方、新卒の学生にとって、経験のある人や即戦力で活躍できるであろう人と同じ土俵で採用試験を受けることになるため、厳しい戦いになると思います。とりわけベンチャー企業は、会社を軌道に必要があるため、新卒よりも中途採用を優先する傾向にあります。何年も時間をかけて人材を育てていくという、そんな悠長ことは言っていられないということでしょうか。

「留学生組」「留年組」には福音

ただ、新卒の学生の中には、海外の大学で学んでいる人や留年している人もおります。いわゆる「就活ルール」の枠組みからは外れてしまっています。彼らにとっては、先のような新卒採用は、福音となるのではないでしょうか。

弊社が運営する「就勝ゼミナール」で、台湾の大学に留学しており、長期休暇期間中に通ってくれていた女子学生がおりました。台湾の大学と日本の大学では、いわゆる学期が異なるため、スケジュールのやりくりに苦労していたようです。彼女は、留学生採用枠での応募がメインとなり、数少ない「持ち駒」の中から見事に有名インテリア関係の企業に内定しました。今だったらもっと就職活動がやりやすかったにちがいないでしょう。

また、私の大学時代のゼミナールの先輩で、浪人して留年した人がおります。その先輩は、郷里の有名な百貨店に就職し、外商担当課長になっておりました。先日、ゼミナールのメンバー同士で会う機会がある中で、その先輩は「今は随分と就職しやすい世の中になったな…。某大手広告代理店のような『留年採用』があったら、もっと早く就職できてちがった人生が待っていたかもしれない」と述べておりました。

誰のための採用か?

つまるところ、誰にとっての新卒採用か?というところに行き着くのかもしれません。

新卒だろうが中途だろうが、早めに優秀な人材を採用したい企業、学業との両立を図りながら就職活動を行う学生、「就活ルール」の枠組みから外れてしまっている留学生や留年生…。企業側、学生側、双方の「歩み寄り」が必要になってくるかもしれませんが、お互いが納得できるような採用活動(学生にとっては就職活動)になることを願っております。

今週もお読みいただきありがとうございました。また来週、お目にかかりましょう。