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2019.06.03 COLUMN

採用とは”芸術”である

2020年卒学生の内定率が50%を超えた中で6月に入り、大手企業の採用面接が解禁となりました。既に2021年度採用に目が向いているという採用担当者の方も多いのではないでしょうか。

さて、採用の現場では、ITやAIの普及により、採用担当者の経験や勘ではなく、採用基準やプロセスを数値化して、より正確さを期した選考を行おうという考えが強まっているようです。実際、ソフトバンクやANAなどといった大手・有名企業では、書類選考(エントリーシート)の段階で、IBM社のAI「ワトソン」が導入されていると聞きます。

たしかに、正確性や公平性といった部分では、それらの文明の利器は、一定の効果を上げているようです。しかしながら、実はそういうところによらない部分に左右されるところも大きい。そう考える向きもあるようです。

AIによる選考は満足度を下げる?

これは転職希望者に取ったアンケートで、新卒採用とは若干異なる部分もあるかもしれませんが、参考までにご紹介しておきます。株式会社ワークポートが全国の転職希望者300人に行った調査によれば、「採用活動にAIを導入すべきではない」と答えた人が、15.3%もいたそうです。また、導入するにしても「書類選考まで」と答えた人は、56%もいたそうです。

弊社が運営する「就勝ゼミナール」の中では、こう答えている学生が多かったようです。

「たしかにフェア(=公平)なのかもしれませんが、AIに判断されている=機械に判断されているということになるので、何だか味気ないですね」(九州大学・地場大手地銀内定男子)

「私の人生を機械に左右されるなんて、ちょっと嫌」(西南学院大学・大手化粧品系企業内定女子)

ひょっとしたら、そういったITやAIによる選考は、応募学生を萎えさせるかもしれません。

カウンセリングの第一人者の”金言”

カウンセリングの第一人者で、文化庁長官も務めた河合隼雄氏(故人)は、著書『人の心はどこまでわかるか』(講談社+α新書)の中で、人の心は「どこまでわかるかというと、ほとんどわからないというのが答えと言っていいほどである」と述べています。

ITやAIが得意なのは、膨大なデータの分析といった分野で、直感や感性といった部分は、まだまだ苦手なようです。感情を持った人間を目の前にする採用面接では、ITやAIによる選考も、限界を迎えるときがくるといってもよいでしょう。新卒採用では、応募学生のことを、学生時代の経験から成果を出せる人物であるかどうかを類推しながら判断していくので、なおさらそうであるといえるのではないでしょうか。

では、そうした感情をもった人間を相手にした面接において、応募学生にできるだけホンネを語ってもらい、採用につなげていくにはどうすればいいのでしょうか。それは、安心して話せる環境づくりだと思います。

安心感を提供できているか

これは誰だってそうでしょうが、信頼できる、親しみが持てる相手でなければ、なかなか心を開いて自分のことを話せないはずです。いくらいい質問をしても、表面的な、マニュアル的な回答しか返ってこない可能性が高いでしょう。

弊社の「就勝ゼミナール」に通う学生に、入社の決め手を聞くと、その中のひとつに面接官の雰囲気や印象の良さを挙げる学生が思いのほか多かったのです。

「面接官の方が最後までニコニコしながら話を聞いてくれた」(福岡工業大学・塗料メーカー内定男子)

「人事採用担当者がすごく優しい感じの人だった。自分の思いをしっかり伝えることができたし、『君が素直に思いを伝えてくれたので、お互いにとってよかった』とも話してくれました」(西南学院大学・大手電機メーカー内定男子)

つまるところ、採用というのは、データ×採用担当者の人間力という総合芸術ではないか。そう思うのです。

今週もお読みいただきありがとうございました。また来週、お目にかかりましょう。