管理職の「かまって」が止まらない!さてどうする?
今回は、管理職育成について実際のご相談事例に基づいて取り組み事項をまとめております。
【前提条件】創業35年、卸売業、売上15億、従業員数30名
【ご相談者様】経営者
【お悩み】将来私の両脇を固めてもらいたいと思っているメンバーです。しかし、4年間「かまって病」が止まらず、意図的に話を聞く機会を減らしているにも関わらず「社長は私に冷たくなった」と言う始末です。会社を支えていく大事なメンバーですが、どうしたら幹部として変わってもらえるでしょうか?
この度は、ご相談をいただきありがとうございます。4年間にも及ぶと経営者様自身も様々な感情も湧いてくることとお察しいたします。その上で、少しでも貴社のお役に立ちますよう回答いたします。
ご本人と面談または話をいただく際は下記順序を辿ってください。
(1)本面談の目的とゴールの確認
(2)本人の自己認識はどうなっているか?
(3)他人からの見え方はどうか?
(4)会社として求めている役割は何か?
(5)役割を承諾してもらえるか?
それでは、1つずつ読み解いていきましょう。
(1)本面談の目的とゴールの確認
まず、大事なのは目的と本日のゴールの共有です。特に今回のケースのように幹部に期待することと改善を伝える場ですので経営者側が思い描いている目的とゴールを最初に伝えて、理解してもらえたかを確認してからがスタートです。
(2)本人の自己認識はどうなっているか?
最初は、「ご本人が現状を俯瞰して見た時に本当はどう見えるか?」について答えていただくことです。ポイントは「俯瞰」と「本当は」です。この問いは主観を排除して、強制的に本人の内面に潜り込む問いになります。さらに、主観の意見は感情が入りやすいですが「俯瞰」しての意見は感情を排除して冷静に話がしやすくなります。
(3)他人からの見え方はどうか?
こちらについては、社内のサーベイやアンケート等が事実ベースで使いやすいです。個別に経営者様が集めた情報にするとわざと偏るような情報にしたのではないか等誤解や憶測を招いて効果的では無くなります。
(4)会社として求めている役割は何か?
ご相談内容にもございましたが「両脇を固める」ということであれば役員または管理職(幹部)であるとお見受けします。そこで必要なのは「会社としての役割定義」です。もう少し細かく申し上げると人事制度における「役割等級制度」が重要になってきます。この中で具体的な要件をお示しください。
さらに、お悩みにもございました「かまって病」についてです。これは、マズローの欲求段階説における第4段階の承認欲求にあたると考えられます。ちなみに、承認欲求における尊重には「低いレベルの尊重欲求」と「高いレベルの尊重欲求」が存在すると言われています。低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、名声、注目などを得ることによって満たされます。そして高いレベルの尊重欲求は、自己尊重の意識付け、技術や能力の習得、自立性などを得ることで満たされ、他人からの評価より自分自身の評価を重視する傾向になります。
おそらく経営者様としては後者である「高いレベルの尊重欲求」に移行をして欲しいとお考えなのではないでしょうか。ところが当事者である管理職の方は「低いレベルの尊重欲求」が満たされておらず、自己認識をお持ちでない可能性が高いです。
そして、この「高いレベルの尊重欲求」にシフトする際には外的要因では本質的な解決は致しません。詰まるところご本人が「部下やチームが評価してもらえていることに喜びを自分で感じる」等解釈を変更いただく必要がございます。そのため、このような状態要件を役割等級制度の定義に盛り込むのも1つであると考えられます。
(5)役割を承諾してもらえるか?
最後の面談では、改めて前述に出て確認したことの認識合わせになります。「●さんにこれから期待したいことは▲なんだけどここは理解してもらえたかな?」に対して「Yes」を貰う様にします。ここの返事まで間が空くようであれば「腑に落ちない部分があれば教えて欲しい」とリクエストを出してすり合わせをしましょう。
今回ご相談をいただいた事例は、中小企業ではよく起こる事象です。特に、経営者様との心の距離が近かった環境から加速度的に経営者様が事業成長のために現場と離れ始めると起こりやすい現象です。しかし、このような事象も企業成長には必要な要素だと私たちは考えます。
いわゆる「親離れ、子離れ」の話です。
お互いに健全な成長を通じて事業を成長させていただけますと幸いです。
本記事についてご質問やお問い合わせがあれば以下よりご連絡ください。