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2018.08.20 COLUMN

最近注目の「リファラル採用」とは?

長くて短い?短くて長い?お盆休みが終わりました。きょうから業務開始、”社会復帰”という採用担当者の方も多いのではないでしょうか。きょうからネジを巻き直して、いっしょに熱い夏を乗り切っていきましょう。今回もよろしくお願いいたします。

さて、最近「リファラル採用」が、にわかに採用手法のトレンドになりつつあるようです。「リファラル採用」、ご存知でしょうか。今回のコラムでは、「リファラル採用」の言葉の定義から、導入のメリット・デメリットまで見ていきたいと思います。

「リファラル採用」は、社員が自発的に学生を紹介する

まずは、「リファラル採用」の言葉の定義から見ていきましょう。

「リファラル採用」とは、(若手)社員自ら「いい人紹介します」という具合で、自社が求める採用要件に合いそうな人物を、人事・採用担当者に紹介・推薦し、選考を行う採用手法のことをいいます。欧米のIT系企業などで導入したのをきっかけに、日本でも2015年あたりから採用で取り入れる企業が増えつつあります。

「コネ採用」と「リクルーター制度」とのちがいが、少々わかりにくいですよね。ここで「コネ採用」と「リクルーター制度」についても少し触れておきましょう。

「コネ採用」とは、社内で一定の役職や地位にある人の親族や大口取引先(クライエント)からの子息・令嬢などの紹介によって採用する手法のことです。この手法は昔から存在して浸透しており、縁故採用ともいいますね。

日本では、企業の幹部や大口取引先に就職の世話を頼まれ、採用要件を満たしていない人物だとしても、「あの子は〇〇会社の××社長のご子息だから」という理由で採用するという、どちらかといえば、ネガティブなイメージが強いようです。私が、新卒で入社した某企業でも、そういう体の人は一定数いました。

「リクルーター制度」とは、企業主導で、上司から(若手)社員に「今年はこういう人を採用したいけど、誰かいい人いない?」という具合で、自社が求める採用要件に合いそうな人物を紹介・推薦してもらう採用手法です。募集期間から内定、入社後のフォローに至るまでの責任が発生します。「リクルーター制度」は、人物の紹介・推薦までは、「リファラル採用」と同じですが、責任の有無が異なるといえます。

少々ややこしくなってきましたので、「リファラル採用」「コネ採用」「リクルーター制度」のちがいを表にまとめてみました。

では、なぜ「リファラル採用」が拡大しつつあるのでしょうか。その背景のひとつに、採用チャネルの多様化がありそうです。

採用チャネルの多様化

弊社が運営する「就勝ゼミナール」の学生を見ていますと、学生生活そのものの多様化を感じます。一昔前ですと、たとえば「A大学の野球部」「B大学の〇〇ゼミ」といった感じで、所属クラブやゼミナールから学生をピックアップして、声をかけていくといった手法が多く用いられてきました。もちろん、今でもそうした手法は残っており、一定の”効果”を上げています。

しかしながら、最近は、アルバイト(複数かけもちしている学生も少なくありません)、ボランティア活動、社会人野球チームなどの学外サークル、留学など、学生生活そのものが多様化してきています。また、部活動やアルバイトそのものをしていないという学生も増えており(私も、部活動やサークル活動をしていませんでした…)、今までの部活動やゼミナールに限ってしまうと、採用したい学生に出会うことが、なかなか困難になっているといえそうです。

では、「リファラル採用」を導入することのメリットは、どこにあるのでしょうか。主なメリットを3つ解説いたします。

メリット①:採用コストが抑えられる

いわゆる「就職ナビ」に有料求人広告を出しても、就職フェアなどのイベントに出展しても、なかなか人が集まりにくい(=自社の採用試験を受験する母集団を形成しにくい)、逆に、学生の応募数はそれなりにあるものの、質を担保できていないという採用担当者の嘆きの声をしばしば耳にすることがあります。いずれにせよ、求人広告掲載料に見合った効果が得られない、採算が取れないということなのでしょうか。

社員からの紹介による「リファラル採用」ですと、採用活動にまつわるコスト(=ヒト、カネ、モノ、時間などの労力)が抑えられます。また、後ほど触れますが、自社のことを理解し、愛着を持っている社員からの紹介だと、定着率が高くなるということもいえると思います。

メリット②:自社に合った人材を確保しやすくなる

社員の知人・友人・後輩だと、いい意味で「似た者同士」が集まりやすくなります。例えば、貴社のエース級の人材なら、自分に似ており、かつ自社に貢献してくれそうな人材を紹介してくれる可能性が高いといえます。したがって、よりよい人材の確保が見込めるでしょう。

また、専門性の高い職種の場合、一般的な求人方法だとよい人材が集まりにくくなってしまうこともあります。その点、「リファラル採用」ですと、同じようなもしくはそれ以上の能力を持った人材に出会え、思わぬ人材を発掘できる可能性が高くなるでしょう。

メリット③:学生に受け入れられやすい

社員自ら誰からも強制されることなく、友人・知人に対して「ウチの会社受けてみない?人事採用担当者を紹介するよ」とすすめるのは、本当の自社のことを良く思っている、愛着を持っている、ロイヤリティ(=忠誠心)が高いからこそだと思います。採用担当者の皆さまも、自分がいいと思っているサービスやモノって、(熱量を持って)誰かにすすめたくなりますよね。

そういう人から「君にはウチの会社、合っていると思うよ」と、会社のことをすすめられれば、学生は「自分のことをよく知っている人がすすめてくれているのだから、安心して受けてみよう」という気持ちになって、自社の採用試験を受けてくれる割合が高くなるのではないでしょうか。

また、「リファラル採用」は、「コネ採用」や「リクルーター制度」とちがって、特別な選考に乗ることはありません。そして、紹介者は選考に加わることも少ないようですから、応募学生は紹介者との関係をそこまで気にしなくてもよいのです。緩いつながりを好むイマドキの学生たちに、受け入れられやすいともいえるのではないでしょうか。

ここまで、「リファラル採用」のメリット3点(採用コストの削減、自社に合った人材が確保しやすくなる、学生に受け入れられやすい)ことを見てきました。

その一方で、当然デメリットもあります。以下、デメリットを3つ挙げておきます。

デメリット①:紹介者と応募者との関係が気まずくなる

「リファラル採用」で応募した学生が不採用になってしまった場合、社員と紹介学生との人間関係が気まずくなってしまうという懸念があります。不採用というのは、双方にとって、大変ショックな結果になってしまうと思います。そうしたリスクを、お互いが共有しておく必要はあるでしょう。

デメリット②:社員(リクルーター)の教育が必要になる

特に中小企業ですと、さすがに人事・総務のメンバーだけでは、「リファラル採用」を行うための人手(リクルーター)が足りません。そうすると、営業や研究開発部門などこれまで採用活動に加わったことのない社員も動員し、採用活動に参加する機会が、どうしても多くなるのです。したがって、社員への「リファラル採用」についての教育が必要になってきます。

では、どのようなところを教育していけばよいのでしょうか。それは、主に自社の企業理念や経営ビジョン、求める人物像の把握などです。ここがわかっていて、学生にきちんと伝えられれば、ミスマッチを防ぐ確率が高くなるでしょう。

デメリット③:偏った人材が集まりがちになる

一般論でいうと、「学閥」や「出身地」など、似たような人材が集まって(会社に不利益な)”派閥”のようなものができる可能性があります。特定の職種などでは、それでも「リファラル採用」の恩恵にあずかれるかもしれません。

しかしながら、「リファラル採用」において、社員が紹介する学生は、部活動やアルバイトの後輩だったりするケースが多いのです。その結果、偏った人材が集まりがちになって、多様な人材の確保が難しくなってしまうかもしれません。

ここまで「リファラル採用」のデメリット3点(紹介者と応募者との関係が気まずくなる、社員の教育が必要になる、偏った人材が集まりがちになる)について見てきました。

「リファラル採用」を導入した企業の約2割が「順調」

マンパワーグループが2017年2月に行った調査によれば、「リファラル採用」を導入している企業の割合は58.2%に上ったそうです。また、そのうちの19.5%の企業が、「リファラル採用の運用が順調に機能している」と回答しています。人材獲得競争を勝ち抜くひとつの手段として、おそらく「リファラル採用」は、今後も広がりを見せるのではないでしょうか。

今回もお読みいただきまして、ありがとうございました。それでは、来週もお目にかかりましょう。