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2018.06.17 COLUMN

オワハラは逆効果!焦らずに待つ姿勢が学生に安心感を与えます

オワハラーこの言葉を一度耳にしたことのある採用担当者の方、多いのではないでしょうか。オワハラとは、「就職活動終われハラスメント」の略です。企業が学生の内定辞退を防ごうと、あの手この手で学生を囲い込むことをいいます。

2016年卒の”就活後ろ倒し”でオワハラが表面化した

このオワハラ、実は最近はじまった話ではありません。バブル期でも、内定者を食事や旅行に連れて行くといったことがあったそうですので、これも今時のオワハラに該当するでしょうか(筆者は、就職氷河期かつ「ロスジェネ」世代なので、まったくピンと来ないのですが…)。

オワハラは、2016年卒採用で採用スケジュールが”後ろ倒し”になったことから、あるNPO法人がYouTubeに投稿した動画が話題となり、これだけ浸透することになったそうです。言われてみれば、2016年卒の「就勝ゼミナール」の学生から、このオワハラを耳にする機会が増えたように感じます。筆者は、最初のころに「オワハラって何?」と学生に尋ねていたこともありました。

企業がオワハラを行う論理

それでは、企業はなぜオワハラを行う、もしくは行わざるを得なくなっているのでしょうか。それは、何といっても、採用活動スケジュールの度重なる変更、人手不足に伴う頭数を確保する必要性に迫られていることといえそうです。

【採用活動スケジュールの度重なる変更】

採用活動スケジュールのルールを決めているのは、日本経団連と政府です。彼らが申し合わせて、採用活動のルールを決めています。以下、採用活動スケジュールの変遷について見ていくことにしましょう。

採用活動スケジュールの変遷(弊社作成)

特に注目すべきは、2016年卒の面接選考が解禁される時期でしょう。2015年卒よりも、半年近く”後ろ倒し”になっています。これは、「学業に専念してほしい」という日本経団連と政府の意向によるものです。面接選考→内定式までわずか2か月程度しかない短期決戦になったため、採用の現場に大きな混乱が生じました。先の採用スケジュールについて内外から批判の声が噴出したため、2017年卒から現行の採用スケジュールとなっています。

ただ、このスケジュールは、守らなかったからといって罰則規定があるわけではありません。「日本経団連に加盟している企業は、できれば守ってね」という感じの緩い”紳士協定”のようなものです。日本経団連に加盟していない企業に至っては、大手企業に(優秀な)人材を奪われまいと自社独自のスケジュールで選考を進めていきます。

このように、猫の目のようにめまぐるしく変わる採用スケジュールに、企業の採用担当者は振り回され、「内定を出したものの、何人学生が入ってくるかわからない」「ウチは中小企業だから、後から大手が内定を出したら、そちらに学生が流れてしまう」といった不安を感じ、(優秀な)学生の囲い込みに走るということにつながっているのではないでしょうか。これは無理からぬ話だと思います。

【人手不足に伴う頭数確保の必要性】

既に日本は人口減少社会に突入しており、今から約40年後の2060年には日本の総人口が8673万人になると予想されています(2017年4月6日付 国立社会保障・人口問題研究所「人口推計資料集2017」)。若い人が減り、高齢者が増えるという少子高齢化社会がより進み、社会保障の行き詰まり、労働者や消費者の数が減ることに伴う経済の縮小などといった現実に直面することになります。特に、建設、IT、医療・介護、飲食、運輸業などで慢性的な人手不足に悩まされているようです。

企業が現状を維持、否成長を目指そうとするなら、労働力の確保なしでは成しえません。貴社の利益を出す仕組みに対して貢献しているのは、やはり企業の構成員たる社員ではないでしょうか。

もちろん、AI(人工知能)の導入、IT化、オートメーション化によって、ITや機械が利益を出す仕組みに貢献してくれている部分は大きいですが、最終的にそれらを使いこなすのはヒト、つまり社員です。その労働力を確保しようと、企業は躍起になっている、もしくは躍起にならざるを得ないといえるでしょう。

オワハラは学生に嫌悪感しか残らない

「〇〇会社のオワハラが半端ないですので、辞退しました。いい会社だと思ったのに、企業側の態度が豹変して一気に冷めました」(西南学院大学、金融系内定男子)

「まだ納得いくまで就活を続けたいのに、一週間後に返事をくださいってどういうことなのでしょうか。僕の人生なのに…」(九州産業大学、大手住宅メーカー内定男子)

「ある会社の最終面接で、その場ですべての選考を辞退したら内定をあげるって言われました。これってえげつないと思いませんか?」(信州大学、地場大手ガス会社内定男子)

私どもの「就勝ゼミナール」では、こうした声を毎年のように聞きます。そして、学生は毎年のように悩みます。

前回のコラムでも触れましたが、企業が学生に内定を出した後、主導権が企業から学生の手に移ります。つまり、学生が企業から選ばれる立場から、企業を選ぶ立場へと変わるのです。

昨今は、バブル期並みの「売り手市場」ですので、企業は学生から選んでもらわなければ、”頭数”を確保できなくなります。そうすると、オワハラというのは、学生側に悪い印象を与えてしまい、嫌悪感だけが残ることになるのではないでしょうか。「こんな会社に入りたくない」と思われたら、ある意味で”一巻の終わり”です。

オワハラの”ハラスメント”は、受け手の受け取り方による部分が大きいのですが、採用担当者や経営者の行き過ぎた言葉や行動が、学生にプレッシャーとなってオワハラとなり、内定辞退につながってしまうかもしれません。下手をすると、学生がインターネットの掲示板やSNSでそうした情報を拡散し、企業イメージの低下につながりかねないかもしれません。

もちろん、こうした情報を不要に拡散する学生側にも大いに問題がありますし、企業側としては必要以上におびえる必要はないでしょうが、学生への対応には注意を払いたいところです。ネットだけではなく、口コミで後輩学生に広がってしまうこともあります。

弊社の「就勝ゼミナール」に在籍している学生から、こんな声を聞きました。

「よっぽど人手が足りないのか、自分の会社って中小だから大手に人を取られて入社してもらえる自信がないということなのでしょうかね」(近畿大学、インテリア系企業内定女子)

「オワハラがひどい会社って、後輩にすすめようとは絶対に思いません」(久留米大学、携帯電話販売会社内定女子)

「人事採用担当者から内定者が集まる飲み会に来なければ内定を取り消すかのような発言があった。たまたま他の用事で行けないことを伝えると、自分の悪口まで言われて不愉快だった。こんな企業、こちらからお断りです」(久留米大学、地場有名企業内定男子)

つまり、オワハラは感情的なしこりを残すだけで、かえって逆効果といえましょう。

では、どのような対応だったら、学生に安心感を与えられるのでしょうか。「就勝ゼミナール」の学生の声から、そのヒントを探ってみたいと思います。

焦らずに待つ姿勢、やさしいフォローが学生に安心感を与える

「納得するまで就活を続けたい旨を伝えたところ、期限こそ企業側から聞かれたもののそれを了承してくれた。入社するかどうかは別にして、その企業に対するイメージはいい」(九州産業大学、大手住宅メーカー内定男子)

「素直に入社を迷っていることを伝えると、不安を取り除いてくれるようなフォローのメールや電話を頻繁にくれた。決して入社を強要するものではなく、自分の将来のことについて親身に考えてくれているようで、うれしかった。親とも相談しますが、自分の中では、この会社でお世話になろうかなと思っています」(西南学院大学、大手電機メーカー内定男子)

「辞退したある大手企業の、その後のフォローがすごかった。人事採用担当者から『どうして当社を入社先として選んでいただけなかったのでしょうか?』『どうすれば、〇〇さんのような優秀な方に入社していただけるのか、教えていただけませんか』といったメールが届いた。こういう対応ができる企業って、なかなかないと思う」(九州大学大学院、大手食品メーカー研究職内定女子)

このように、「焦らず学生の気持ちが固まるのを待つ姿勢」「期限を設けつつ、決して入社を強要しないやさしいフォロー」が、学生の安心感を生み、企業に好印象をもったまま入社につながるケースが多いようです。

学生にとって、就職活動はその後の40数年間の人生をつくっていくもの。だからこそ、学生・企業にとって、お互いが納得いくような就職・採用活動になれば、貴社の成長にもつながると私どもは考えますが、いかがでしょうか。