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2022.10.27 COLUMN

未曾有の物価高!自社の賃金制度はどうするべきか?

「最近、物価が高いから、毎月1万円支給します」。
いま、物価上昇による生活費の負担を軽減しようと「インフレ手当」を支給する企業が増えています。

しかし、中小企業においては上げたい気持ちは山々だがおいそれとは行かないのも事実です。それでは、どんな点に留意する必要があるでしょうか。

他社の導入例

報道によれば、次のような企業が、同様の手当や給与の底上げを実施、ないし予定しているそうです。

●ケンミン食品「インフレ手当」

7月8日の賞与支給にあわせて、今年1月までに入社した正社員と契約社員190人に支給。支給額は、在籍日数1年以上の正社員と契約社員170人には一律5万円、それ以外の20人には、在籍日数に応じて1万~3万円。物価上昇の推移を見ながら、追加の支給も検討。

●大都「インフレ特別手当」

全社員29人に、一律10万円を支給。

●ノジマ「物価上昇応援手当」

正社員と契約社員の計約3,000人を対象に、7月支給分の給与から毎月1万円を支給。

●トヨクモ

来年度、業績変動の影響を受けない固定賞与を1ヵ月分引き上げる。

●イートアンドホールディングス(大阪王将)

社員など約480人に「生活応援特別手当」を支給、10月支給分から一律8千円を毎月の給与に上乗せ。

諸手当で対応する際に気を付けることがある

企業によって、一時金として支給されたり、継続的な「賃上げ」だったりしますが、いずれにしても、そのまま手取りになるわけではなく、所得税が課税されます。所得税は、所得が増えるほど段階的に税率が上がる仕組み(累進課税)になっていますから、手当をもらったために納税額が大きく増える、ということも可能性としてはあり得ます。また、扶養関係には気をつける必要があります。世帯主の扶養に入っている場合、給与所得が103万円を超えると、配偶者控除が受けられなくなります。一方、世帯主のほうも、所得が1,000万円を超えると、やはり控除は受けられません。支給額と控除額のバランスは、検討の要ありです。

インフレ手当は社会保険料の算定基礎に含まれるのか否か?

また、企業として把握しておきたい事として「社会保険料への影響」です。

結論として、現行法に則って考えるとインフレ手当を一時金で支払っても、社会保険料の算定基礎から除外することはできないと考えられます。

事例の1つとして、年金事務所にこのような一時金について、社会保険の算定基礎に含めるべきか確認をすると、「物価上昇のため生活費を補填する手当は一時的であっても、従業員が負担すべきものに対する補填となり報酬に含めるように」と回答をうけます。これは1回限りの支払いであっても、「被保険者の通常の生計に充てられる性質のもの」となるものは、「極めて狭義に解するものとすること」に則って、臨時に受けるもので社会保険料の算定基礎から除いてよいものにあてはまらないと判断されたと推察されます。

つまりどうしたらいいのか?

ここからは各企業様の文化や方針に基づく意思決定の領域に入ってまいります。今回の件については、抜け穴のようなものは皆無と考えられる以上従業員の生活保障と事業継続の天秤をかけた時に出来る範囲で最大限の取り組みがあることが望ましいと考えます。

また、重要なのは支給時に管理職が一般職に会社がわざわざ支給する意図を従業員が理解できるまで伝えることです。人は残念ながら貰い始めるといずれ貰うことが当たり前になります。物価高が落ち着き諸手当を外し、支給額が下がろうものなら不満に変わります。それらを適切に運営するための鍵は経営者以上に管理職の協力です。

是非、一丸となりこの環境を乗り越えていきましょう。