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2021.05.26 COLUMN

well-being(ウェルビーイング)とは?

well-being(ウェルビーイング)とは

心身ともに、さらに社会的にも健康な状態を指し、満足した生活を送れる状態にあること

近年、企業の経営方針や組織のあり方の1つの概念として取り上げられることが増えているwell-being(ウェルビーイング)。

well-being(ウェルビーイング)とは、心身ともに、さらに社会的にも健康な状態を指し、満足した生活を送れる状態にあることだとされています。

1946年の世界保健機関(WHO)憲章では、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます(日本WHO協会:訳)」と用いられています。

well-being(ウェルビーイング)を、そのまま訳すと「幸福な状態」となりますが、同じ幸福を表す「happiness(ハピネス)」とは意味が異なります。happiness(ハピネス)は、うれしい・楽しいといった心理状態を表す言葉なのに対し、well-being(ウェルビーイング)は、心身ともに健康で健やかな状態にいることを指します。

さらに、経営面や人事面で使われる場合には、「心身の健康的な状態」をベースに、従業員のモチベーションアップ、人間関係の改善、帰属意識の向上にも繋がるという考え方を示しています。
従業員一人ひとりが心身ともに健康的な状態であることが、会社組織としてもプラスに働くという概念です。

well-being(ウェルビーイング)という考え方が注目される背景

人手不足により、これまで以上に従業員自身の生産性や創造性を高める必要性ができた

なぜ、well-being(ウェルビーイング)が、いま注目されているのでしょうか。その理由の1つに、従業員を取り巻く環境の変化があげられます。

近年、人手不足が深刻な課題とされています。もともと人材が不足しているのに、採用も困難な状況となっており、従業員は従来以上に、生産性の向上、業務の効率化を求められるようになっています。

さらに、現在の日本企業では、新しいモノゴトを生み出し、進めていく力が必要とされています。そこで必要になるのが、従業員の創造性や革新性です。

従業員には、既存業務の生産性を向上し業務を効率化する力や、新しいモノゴトを進めていく創造性が必要とされているのです。その従業員の生産性や創造性を高めるための1つの方法として、well-being(ウェルビーイング)は注目されるようになりました。

アメリカで行われたいくつかの調査によると、「幸福な従業員は不幸な従業員より創造性が3倍高い」「幸福な従業員は不幸な従業員より生産性が1.3倍高い」と報告されています。(※1)

これらの結果からも、従業員が幸福な状態であることは、生産性や創造性を高めることになり、結果として企業にとってもよい循環がうみだせると考えられています。

(※1)幸せな社員は創造性3倍、労働生産性1.3倍 働き方改革における幸福度の重要性を説く/ウイングアークフォーラム2017 東京

国による、健康経営の推進

また、従業員の健康に配慮した経営を行う「健康経営」が推進されていることも1つの要因です。

経済産業省が主導となり、健康経営が推進されています。優れた健康経営を実践している上場企業を「健康経営銘柄」として選定したり、「健康経営優良法人認定制度」を導入し、健康経営に積極的に取り組む企業を認定するといったように、企業にとって健康経営は取り入れなければならない課題となっているのです。(※2)

「健康経営」を実践するにあたり、well-being(ウェルビーイング)という概念は必要不可欠です。従業員の身体的健康を考えるだけでなく、精神面も含めた健康を実現し、その状態を維持するというwell-being(ウェルビーイング)の考え方は、健康経営をさらに具体的に進めるための概念といえるのです。

(※2)健康経営の推進/経済産業省

従業員にとっての「well-being(ウェルビーイング)」はメリットが多数

企業にとってメリットのあるwell-being(ウェルビーイング)ですが、実践するのは従業員です。企業はwell-being(ウェルビーイング)を実践するための制度を整えることはできますが、その制度を活用し、目的を実現させていくのは従業員一人ひとりです。

well-being(ウェルビーイング)は、従業員にとっても受けられるメリットが大きいものです。会社が自分の心身の健康のために制度を整えてくれるということになるので、活用しない手はありません。

自分にとって「心身ともに健康で満足な状態」を考えるよい機会となる

well-being(ウェルビーイング)は概念なので、実際にその概念が自分にとってどのようなものなのか具体的に考えてみる必要があります。

組織の中で、自分はどういう状態であれば幸せなのか、満足できるのかを思い描いてみましょう。そこに向かって、会社の制度を活用していけばよいのです。

心身ともに健康的な状態を維持できる職場になる

毎日多くの時間を過ごす職場。ブラック企業という言葉が話題になるように、劣悪な環境では働きたくないですよね。well-being(ウェルビーイング)を取り入れている組織であれば、組織全体として「心身ともに健康的な状態」を推奨しているため、劣悪な環境にはなりづらいものです。

人間関係の改善が見込める

職場でのストレスの多くは、人間関係によるものだと言われています。ある研究では、職場の人間関係は、直接的に個人のwell-being(ウェルビーイング)に影響すると報告されています。(※3)

well-being(ウェルビーイング)に取り組むためには、人間関係の改善が不可欠なのです。従来の企業経営では個人の問題としてあまり注目されてこなかった人間関係の改善に、組織として取り組むことができるはずです。

(※3)看護師のウェルビーイングとコミットメント・職場の人間関係との関連性

自分の心身状態を把握する機会にも

well-being(ウェルビーイング)を導入している企業の中には、従業員のwell-being(ウェルビーイング)度を測定するシステムを導入している企業もあります。

客観的に測定することで、自分では気づかなかったストレスや好影響を受けている対象に気づくことができるかもしれません。可視化されることで、自分でもどうしていくべきか対策を考えることができるはずです。

従業員のために会社が行うことができる4つのアクション例

企業がwell-being(ウェルビーイング)を制度として導入し定着させるためには、どのような方法があるのでしょうか。いくつかの事例を交えご紹介します。

1.労働法の遵守

従業員を雇用しているのであれば、労働法を遵守するのは当然のことです。しかし、実態をみてみると、労働時間が長くなっていたり、休憩がとれていなかったり、有給がとりづらい職場になっていたりすることも。

今一度、労働法を見直して、問題がないかを確認することから始めましょう。「法令遵守度チェック表」も公開されているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考:職場の「法令遵守度」チェック/全労連

2.ストレスチェック制度の実施

2015年度から従業員に義務付けられているストレスチェック制度。この制度では、常時50名以上の労働者を雇用している事業所が対象とされています。制度施行後、8割の企業が実施をした(※4)とされていますが、対象は常時50名以上を雇用する企業です。

制度の対象外となる従業員規模の企業でも、この制度を利用することで従業員のストレス度を把握することができwell-being(ウェルビーイング)に繋がります。また、従業員自身も、自分の心身状態を把握する機会にもなり、早めに対策を考えることができるメリットもあります。

(※4)ストレスチェック制度の実施状況を施行後はじめて公表します

参考記事:ストレスコーピングとは?その種類や、対策を解説。 必要なのは働きがいのある職場づくり

3.福利厚生など「社内制度の見直し」

日本のの多くの企業で福利厚生制度が導入されています。具体的な内容としては、法定外の福利厚生制度として、家賃補助や食事補助、会員制サービスの導入などがあげられます。

しかし、実態として従業員に活用されていないものも多いものです。従業員のための福利厚生制度ですが、活用されず形骸化していてはコストの無駄にもなりかねません。近年のwell-being(ウェルビーイング)や健康経営の推進の流れから、福利厚生サービスも様々なものが登場しています。

特定の正社員が活用できる家賃補助や食事補助といったものではなく、すべての社員が平等に、使いたいときに使える社食サービスに切り替えたり、生産性向上や創造性を高めるためのスキルアップや課外活動に補助を出すなど、従業員の使いやすさを考慮した福利厚生制度への見直しも、well-being(ウェルビーイング)を考えるうえで有効な施策です。

金銭面での補助を出すだけでなく、称賛文化や感謝し合う文化を作りチームワークを高めたり、コミュニケーション活性化のための取り組みに会社として様々な取り組みを行っていくことも重要です。

4.well-being(ウェルビーイング)測定・実践するツールを導入する

well-being(ウェルビーイング)は、「概念」ですので、外から見ても、従業員に取り入れられているのか、定着しているのかわかりづらい部分があります。近年、従業員の心身の状態を測定する仕組みが複数の企業で開発されています。心拍数や体温などの生体反応や行動情報をウェアラブル端末で測定し、自分の評価と第三者の評価を取り入れ、総合的に測定することが可能なものもあります。

そこまで大掛かりなもので測定する前には、社内SNSなどのツールを導入することで、社員同士のつながりを可視化し、エンゲージメントの向上やモチベーションUPにつながる取り組みを実施することも可能です。

「従業員が自身と会社のために前向きに働く環境づくり」のためにwell-beingの視点を

近年注目を集めているwell-being(ウェルビーイング)。人材不足が深刻化し働き方改革を推進する日本企業にとっては、well-being(ウェルビーイング)は今後必ず取り組んでいかなければならない課題となるでしょう。

well-being(ウェルビーイング)は、取り組む姿勢を示し、組織単位で小さなことから始められるものです。制度としてとりいれるだけでなく、well-being(ウェルビーイング)を定着させるために工夫できる組織風土を作ることも重要になるはずです。

経営層や管理職が率先して休暇をとったり、従業員へ声掛けをしたりということから始めてみることも最初の第一歩として重要なアクションです。