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2020.12.21 COLUMN

リストラを未然に防ぐために必要な2大チェックポイントとは

その職種や役職は、本当に組織にとって必要なのか

例えば社会人1年目からフラットな会社に勤めていた人は、肩書など特に気にしない人が多い。一方で、肩書を多用している組織にかつて勤めていた人が、フラットな組織に転職してきた場合に、「やはり肩書が欲しい」という人達が一定数います。その理由を聞いてみると主に二つあります。

・肩書がないと相手先から舐められてしまう
・肩書によってモチベーションを保てる

つまり逆読みすると、その方達は、「肩書がないと相手先の担当者を舐めてしまう職場」、「肩書がないと、とてもモチベーションなど保てない職場」に勤めてきたのだろうと思います。実際に相手の名刺を見て「え、肩書ないんですか」、「あなたで責任とれるんですか」と言う人もいるようです。社内の人間同士でも、ちょっとした役職の違いでマウンティングしたがるような職場もあることでしょう。そのような職場にいた人が、キャリアが何年も違うのに、名刺の肩書は「〇〇担当」と同じ表記だという場合に戸惑い、頭では理解していていも慣れないということもあるのだと思います。

メンタルが強い人であれば、笑顔で「あ、今私の名刺見て不安に思われました?」、「うちの会社は取締役以外、全員肩書がないので名刺の発注も楽だと総務が言っていますよ、ハハハ」と外部の人には言い切ってしまえばいい話。社内の人間同士も、年齢やキャリアに関係なく普通に敬意を払い合える関係性になればいいのだと思います。ただ、全員がそこまで強くないのです。

だからといって、「では、相手先に馬鹿にされないようにかっこいい役職を作りましょう」ということになると、どうなるでしょうか。「部長、課長、係長、室長、マネージャー、ディレクター、コントローラー、バイスプレジデント……」。やりだしたらきりがなくなります。

職種名についても同じです。近年は少し海外で目新しい職種名が登場すると、企業はすぐそれを取り込んで名乗り始める傾向があります。本当にその組織に必要な職種、役職だったら、全く問題ないと思います。ただし、「気分が上がるから」、「相手に舐められないから」という理由だけで、肩書を無尽蔵に増やそうとすると、副次的に悪影響が組織に出てきます。それは、別になくてもよかったポジションが、知らず知らずの内に、「このポジションは絶対に組織になければならない」と皆が思い込むようになってしまうことです。

職種や役職の新設は、売上や利益をもとに判断すべき

例えば、「部長・課長・係長」という役職がある部署で、課長が転職してしまった場合。係長が課長に昇格した後、係長のポジションは業務の状況が特にひっ迫していなかったら空席にしておいてもいいはずなのに、「とにかく係長を配置しないといけない」と反射的に思ってしまうのです。新型コロナウイルスの影響でテレワークになった際、「承認作業以外、何もやることがない」というポジションの人が出てきてしまうのは、属人的な問題というより、そもそも役職の数が現実の実務作業より多すぎることに問題の根本があるような気がしてなりません。

景気が良い時代であればそれでもいいかもしれませんが、一旦悪くなれば、このような立場の人からリストラされてしまう恐れがあります。また、目新しい職種名の人達などは、資金に余裕があった時はちやほやされていたのが、資金不足に陥った途端に「この人達の仕事、絶対に必要ではないでしょう」と手のひらを返されて同様にリストラされてしまう恐れもあります。総務人事部の大切な仕事の一つに、私は「組織を肥大化させない」ということが挙げられると思います。「本当に、うちの会社にその職種の人が必要ですか」、「本当に、その役職って業務に必要ですか」ということを総務人事部が経営陣や現場と一緒に精査をすることが、会社をつぶさない組織作りには大切だと思います。

そもそも、役職や職種を無尽蔵に増やすと総務人事部の作業、つまり管理コストがものすごくかかります。「社員名簿の管理」、「組織図の管理」、「名刺の管理」、「評価制度の管理」……。人事異動があればこれら全てを変更しなければいけません。ひたすら社員情報の管理をしているだけの総務人事担当者がいる。そんなことが起こらないように、役職、職種の数を必要最低限に絞るという発想を常に持っていたほうがいいでしょう。

経営陣や現場から「このような職種の人がいたほうが、社内コミュニケーションが円滑になる」、「現場には役職をつけてくれたほうが、取引先の担当者と肩書のバランスが取れる」という理由を挙げられると、何の躊躇もなく、職種や役職を新設してしまいがちです。「それによって、実際に売上や利益がどれくらい変わるのか」、反対に、「それによって、どれくらいの作業時間、管理コストが増えるのか」という計数的な視点も常に持ち合わせるバランス感覚が、これからの総務人事部には必要な時代だと思います。