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2020.06.24 COLUMN

労働生産性向上は業務の因数分解から

働き方改革、そして今回の新型コロナウィルス感染症の影響から
企業の中ではより一層「労働生産性向上」という言葉が叫ばれるように
なってきています。

社内の労働生産性に危機感を抱いている企業は少なくないでしょう。
経済協力開発機(OECD)が2018年に発表した生産性ランキングによると、日本の労働生産性は時間あたり47.5ドルで
OECD加盟36か国中20位(主要先進7か国中最下位)という結果になっています。

出典:『日本生産性本部、「労働生産性の国際比較 2018」を公表

日本の時間当たり労働生産性は 47.5 ドル(4,733 円)、OECD 加盟 36 カ国中 20 位』
ここ数年、生産性ランキングで日本が長年低水準をキープしていることが取り上げられたことから、
生産性向上に向けた取り組みを急いでいる企業は多数存在します。
その反面、実現に向けて一体何から始ればよいのか?と悩む企業もまた多いようです。

今回は、労働生産性向上に向けて企業が取り組むべきポイントについて紹介していきます。
大多数の日本企業にとって課題である労働生産性の向上は、どうすれば達成できるのでしょうか。

そもそも、労働生産性向上とは何か?

「一体何から取り組めばいいの?」と悩んでいる企業の大半は、そもそも生産性向上が何かを
理解していないケースが多いようです。「生産性」はビジネス上でよく使用される言葉ですが、
その理解を曖昧なままにしているケースは多く、そのため適切な施策に取り組めず、低いままになっている傾向が見受けられます。

生産性向上というのは「今よりも少ない投資で、今よりも大きな成果を得ること」です。
投資するのは資金だったり人材だったり、設備だったりとさまざまですが、
それらの投資によって生み出されるビジネス上の付加価値を最大限に高めることが、最終的な目的だと言えるでしょう。

生産性の主な指標

生産性を測る際によく使われている指標が「労働生産性」と「人時(にんじ)生産性」です。
前者は資源の投入量に対してどれくらいの付加価値が生まれたかを計算し、
さらに従業員1人あたりの付加価値を算出したものです。
後者は、従業員1人あたりが1時間にいくらの付加価値を生み出せるかを表す指標です。

生産性向上では、まず社内の生産性測定から始めるのがポイントです。
現状を把握していないと、どう改善すればよいのかが分かりません。

今すぐできる生産性向上のための施策

生産性向上へ取り組むにあたり、大規模システムを導入しなければならない、と考えている方も多いかも知れません。
実際に生産性向上のためにITが伴うケースは多いですが、必ずしもそうとは限りません。
ここでは、いますぐできる生産性向上の方法をご紹介します。

1. 個人に帰属する業務の可視化と整理

生産性向上を成功させるポイントとして欠かせないのが、「個々の生産性に着目し、対策を取る」ことです。
組織全体の生産性を上げるには、従業員個人の生産性をそれぞれアップさせる必要があります。そこで、個人に帰属する業務をまず可視化していきます。従業員ごとに現在抱えている業務と問題点をハッキリと把握することで、
優先順位の整理や非効率性の発見ができます。
その際に、「生産性を向上するにはどうすればいいのか?」ではなく、「生産性を低下させている原因は何か?」という視点で考えると、問題を発見しやすくなります。

2. 平準化による属人的業務の排除

社内各部には「ベテラン」と呼ばれる従業員が1人は所属していると思います。彼らが周囲から重宝される理由は、部署内の業務を幅広く把握しており、効率的に仕事を行う術を知っているからです。
しかし、「〇〇さんに任せれば安心」という甘えに、実は大きなリスクが潜んでいます。

部内業務の中にはベテラン従業員以外はできないものも少なからず存在します。では、その従業員がもしも退職したらどうでしょう。ビジネスは確実に停滞します。このリスクを回避するには業務を幅広く平準化(ルール化)し、属人的業務を排除して誰もが等しく業務を遂行できる環境を整えることです。

上記の1・2についてはまさに「業務の因数分解」になります。
そして、これらを通じて本当に「注力すべき業務」が見えて、外部等への委託などを検討することもできます。

3. タイムマネジメントの実施

部門責任者は立場上、誰がいつどこで何をしているか?を把握しなければいけません。これは一般的に勤怠管理を実施するためと考えられていますが、視点を変えて生産性向上のためのタイムマネジメントを実施してみましょう。

何時から何時まで、どの仕事をしてどのような成果が得られたかを把握し、非効率性が隠れていないか、業務効率化の余地はないかなどを考えます。従業員1人1人と一緒に部門責任者が真剣に考えることで、個々の効率が上がり、それが個の生産性を向上させ、最終的に組織の生産性が向上します。

4. 繰り返し改善していくサイクル

生産性向上で最終的に大切になるのは、「問題を見つけて改善する」というサイクルを繰り返し実行していくことです。いずれの施策を取るにせよ、一朝一夕で成果が得らえるものではなく、継続的な改善が必要になります。「PDCAサイクル」を何度も回して、スパイラルアップ効果を得ることが、地道ながら生産性向上の近道だと言えます。

生産性向上の心得

いかがでしょうか。生産性を向上させるにあたり、このようなやり方で今すぐにでも取り組めるものがあります。
最後に、生産性向上を目指すにあたっての心得について説明したいと思います。最も大切なことは、トップダウンで取り組む施策だとしても、
常に組織全体で生産性向上の目的や意義、最終的に目指す目標などを共有することです。企業によっては、従業員が「なぜ生産性を向上させるのか」という理由を理解しないまま取り組んでいるケースがあります。
そうしたケースでは得てして施策に失敗するため、情報共有や意識統一が何よりも大切であることを念頭に置きましょう。

そして、生産性向上には「忍耐」も必要です。即効性のある施策は多くなく、組織全体の生産性を向上しようと考えると、
それなりの時間と労力が必要になります。「効果がなかなか出ないから」と途中であきらめてしまっては、
それまでの努力が水の泡になります。必ず中長期的な計画を立てて、途中で挫折しないような施策を実行していきましょう。

以上、今回は生産性向上の方法についてご紹介しました。