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2020.06.09 COLUMN

社員が辞めにくい会社に共通する姿勢とは?

人材採用市場において現在は、採用難と言われていた時代から変化をしています。とは言え採用コストをかけた優秀な社員が辞めてしまうことは、経営にとって大きな痛手となります。今回は、私が関わってきた数多くの会社のことを振り返りながら、人材が辞めない会社の共通点についてお伝えします。

人が辞めにくい会社に共通する姿勢とは?
離職理由
社員が辞める理由はさまざまですが、そのひとつには、自分の将来のキャリアパスが見えにくくなっていることが挙げられます。「自分はどこに向かおうとしているのだろう」「このままでいいのかな……」そうした疑問が生じることは当然のことです。このときに大切なのは、そうしたタイミングで会社が個人と向き合える環境を持てるかという点です。

人材が辞めにくい会社は、経営層やマネジメント層が社員との対話を重視しています。社員の不満を受け止めたり、新たな提案を検討したり、あるいはビジョンを共有したりと、対話を重ねることで、社員の気持ちを繋ぎとめておくことができます。

対話の重要性が高まっていることは、最近の人事評価制度の変化にも現れてきています。一時期、「MBO評価」と呼ばれる人事評価制度を、多くの企業が導入しました。MBO評価とは、自ら目標を設定し、半年や1年ごとに目標の達成状況を評価するという手法のことですが、最近はアメリカを中心に、MBO評価を見直す企業が増えてきました。

たとえば、2016年にはアメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)が、それまでの人事評価制度をやめたということで話題になっていました。人事の目標は、人にマルバツをつけて評価することではなく、育成してパフォーマンスを上げることであり、過去の人事評価制度は目的に合わなくなってしまったということなのでしょう。

会社として将来のキャリアパスを示してあげる

その理由は、MBO評価が形骸化したことで、経営層やマネジメント層と社員の対話の場が、半年や1年に1回しか設けられなくなったことにあると考えています。昨今のビジネス環境の変化は早く、とくにベンチャー企業などでは、半年前に立てた目標と、現在の会社の状況が乖離しているのが普通です。そうすると、MBO評価で立てた目標が有形無実になってしまうのです。

最近は、形だけの人事評価制度をなくし、各社が独自に経営層やマネジメント層と社員の対話の場を増やしているという印象です。人材が辞めにくいと私が感じた会社では、月に一度はそうした対話の場を設けていました。会社として社員と向き合おうとする姿勢が、そこから見て取ることができました。

社員との対話の仕方にもポイントがあります。それは、相手から話をさせるということです。どんな不満を抱えているのか、自分の将来のキャリアをどのように考えているのか。そのようなことを話してもらった上で、経営層やマネジメント層から、会社として将来のキャリアパスを示してあげるという流れで進めます。対話をするときには、経営層やマネジメント層も社員も、互いに気持ちをさらけだすことが必要です。経営層やマネジメント層が社員と向き合い、会社の理念と個人のキャリアパスがつながっているということを示してあげれば、やりがいを生み、人が辞めにくい会社へと育っていきます。

社員がすぐ辞める会社にならないために

逆に、社員の離職率が高い会社にも特徴があります。これまで説明したことと真逆を考えればいいのですが、やはり社員と向き合っていない会社は、人の心が離れてしまいます。

そのことは、人事の姿勢に顕著に現れます。とくに、人事が会社批判をしているような状況は、大変危険だと思います。

昨今、企業経営においても「人材活用が最重要課題」と言う会社が少なくありません。しかし、9割近くの会社が、言葉が行動に現れていません。たとえば、人材採用においても、求職者の方とのコミュニケーションがスムーズでなかったり、あるいは過去の人事評価制度を漫然と使い続けていたり……。そうした会社は、人材に対する熱量に欠けていると言わざるを得ません。熱量がない会社には従業員が定着しませんから、経営陣から意識して状況を変えていく必要があると思います。

また、人件費のコストカットをした結果、社員の心が離れることにも注意が必要です。一時期は、単純に社員の数や勤務時間を減らすことでコストカットが行われていましたが、最近は、単純作業を行わせるためにRPAやAIの導入など機械化できる作業は社員から手を離すなど、本質的なコストカットに取り組む会社が増えてきているのを感じます。このように、社員に本来のパフォーマンスを発揮させる仕組みを作ることも、社員の離職率を下げるためには欠かせません。