「新卒一括採用」がなくなる?
昨年、日本経団連の中西宏明会長が、新卒一括採用の見直しについて言及し、大きな話題になったことは記憶に新しいところです。
そのような中、「新卒一括採用」という概念をなくし、「新卒一括採用をやめます」と宣言している企業が現れはじめています。今回は、「新卒一括採用」がなくなるかもしれないーそうするとどうなるか?について見ていくことにいたしましょう。
時代に合わなくなってきた?「新卒一括採用」
「新卒一括採用」は、いわゆる高度経済成長時代に、一気に大量に人材を確保するために定着してきたといわれています。そこでは、終身雇用と定期昇給がセットになっておりました。
ところが、少子高齢化、バブル崩壊、(小泉構造改革による)グローバル化のトリプルショックが進むと、社会情勢が急速に変化し、終身雇用と定期昇給を包摂した「新卒一括採用」は、時代にそぐわなくなってきました。
昨今は、「団塊の世代」の大量退職により、人手不足に陥っている企業が多くあるようです。そのせいか、ここ数年の大学生の就職活動は、売り手市場になっており、株式会社マイナビが就職活動について行った学生モニター調査では、「楽」という文字が6年連続でトップに躍り出たほどです。
頭数を揃える必要性に迫られた企業は、「新卒一括採用」をやめざるをえなくなってきているともいえます。「新卒一括採用をやめます」と宣言している企業も出てきました。
時代の流れ
IT企業のガイアックスに勤務し、人事・採用を担当する藤堂和幸さんは、インタビューの中でこう述べています。
「新卒一括採用は、まっさらな人を選んで自分の企業のカラーに染めようという意識があると思います。しかし現代は個の時代。個人のキャリア自律を追求すると、生涯一社で働くのは割が合わない。そうした時代に合わせた採用です」(2019年1月15日付Business Insider Japanの記事より)
終身雇用は既に崩壊しており、企業が一生面倒を見てくれる時代は終わりました。ずっと同じ企業で安定して働けると思っている人は、随分減ってきているようです(それゆえ、弊社の「就勝ゼミナール」の学生たちを見ると、安定志向が強いように見えます)。その点を踏まえると、先のガイアックス・藤堂さんのコメントは、一理あるといえましょう。
また、フリーマーケットアプリ大手のメルカリやマイクロソフトなどの有名IT系企業は、通年採用を行っており、「新卒一括採用」というスタイルを取っていないようです。これも、頭数を揃える、多様な人材を確保したいという企業姿勢の現れなのかもしれません。
人材育成に余裕のない企業
グローバル化とイノベーションが進み、昨日まで良しとされていたものが陳腐化してしまう昨今。変化に対応できる人材を欲している企業が多いと聞きます。その変化に対応していくためには、ある程度のスキルや経験が必要になってくることから「イチから人材を育てる余裕はない」と述べる企業の採用担当者も多いようです。
私の友人で、誰もが知る大手電機メーカーで採用担当をしていた女性も、「できればすぐに使える人がいい」と述べていました。新卒一括採用=即戦力採用という考えを持っている企業は、大なり小なりあるようです。
「就勝ゼミナール」で学生就職支援を行っている身からすると、このような時代の流れは、平々凡々な生活を送ってきた多くの学生にとって、かなり酷だといえるのではないでしょうか。
その一方で、採用担当者が、早くから学生にアプローチしたり、歩み寄ったりすると、優秀な人材の確保につながるともいえそうです。
今週もお読みいただき、ありがとうございました。また来週、お目にかかりましょう。