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2021.01.05 COLUMN

同一労働同一賃金に対応した、交通費など法定外手当の支給とは?

企業が労働者に支給する手当には、労働基準法などの法律で定められたものと、企業が独自に支給するものがあります。後者は法定外の手当とされ、通勤手当(交通費)や役職手当、住宅手当が例です。
正規労働者と同様の仕事内容で働く非正規労働者に対して、法定外の手当をどのように支給すればよいのでしょうか。

1. 正規労働者と同様の仕事に従事する非正規労働者に交通費などを支給すべきか

雇用形態や就業形態にかかわらず、同じ仕事内容なら同じ賃金を得られるとするのが「同一労働同一賃金」の考え方です。パートタイム・有期雇用労働法では、雇用期間の定めによる不合理な待遇差を禁止しています。また、同一労働同一賃金ガイドライン(「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」)では、賃金や各種手当など具体例を挙げて、不合理な待遇差を解消するよう企業側に求めています。

これらの法律・指針に照らし合わせると、同じ仕事内容であるなら、非正規労働者にも正規労働者と同じ基準で通勤手当(交通費)など法定外の手当を支給することになります。

2. 非正規労働者への交通費など法定外の手当の支給例

非正規労働者に対して、法定外手当をどのように支給すればよいのでしょうか。支給の方法として問題がない例と、問題になる例を見ていきましょう。

通勤手当(交通費)の支給例

【短時間・有期雇用労働者の例】

(例)A社では、週4日以上勤務している正規労働者と短時間・有期雇用労働者には、月額の定期券の金額相当額を支給している。週3日以下、または出勤日数が変動する短時間・有期雇用労働者には、出勤日数に応じた日額の交通費相当額を支給している。

→通勤手当の支給方法の基準となっているのは、1週間当たりの出勤日であり、正規労働者であるか、非正規労働者であるかによって支給額を変えているわけではないので問題にはなりません。

【派遣労働者の例】

(例)派遣元B社はC社に派遣労働者を派遣している。C社では、週4日以上勤務している正規労働者には月額の定期券の金額相当額を支給している。派遣元B社は、週3日以下、または出勤日数が変動する派遣労働者に、出勤日数に応じた日額の交通費相当額を支給している。

→派遣元B社は、1週間当たりの出勤日を通勤手当の支給方法の基準としているので問題にはなりません。

役職手当の支給例

【短時間・有期雇用労働者の例】

(例1)役職に応じて役職手当を出しているD社において、正規労働者Xは店長、有期雇用労働者Yも店長。2人の仕事内容も同じ。YにもXと同一の役職手当を支給している。また、短時間労働者Zも所定労働時間はXの半分であるが、XやYと同様に店長の仕事をしている。D社は所定労働時間に比例して、Xの半分の役職手当をZに支給している。

→正規労働者であるか、非正規労働者であるかではなく、店長という役職や労働時間を基準にして役職手当の支給額を定めているので問題にはなりません。

(例2)上記と同じD社において、有期雇用労働者Yは正規労働者Xと同じく店長であり、仕事内容も同じである。しかし、役職手当はXよりも低く支給している。

→同じ役職で仕事内容も同じであるにもかかわらず、正規労働者であるか有期雇用労働者であるかを基準に役職手当の支給額を決めている可能性があるので問題になります。

【派遣労働者の例】

※下記の例は、派遣先均等・均衡方式を前提としています。

(例1)派遣元E社はF社に派遣労働者Xを派遣している。E社およびF社は、役職の内容に対して役職手当を支給している。派遣労働者Xは、F社に雇用されている正規労働者Yと同じ役職で同一の内容の仕事を行っている。そこで、派遣元E社はXに対し、F社がYに支給しているのと同一の役職手当を支給した。

→Xと同じ役職・仕事内容で働く正規労働者Yが得ている役職手当と同一の金額を、派遣元E社がYに支給しているので問題にはなりません。

(例2)上記と同じ条件の下、派遣元E社は派遣労働者Xに対し、F社がYに支給する額よりも低い額の役職手当を支給している。

→派遣元E社は、派遣労働者であることを理由にXの役職手当を正規労働者のYよりも低く支給している可能性があるので問題になります。