マネジメントは上司と部下が力を合わせて取り組むもの(2)
上司の仕事は部下がやりやすくすること、部下の仕事は上司がやりやすくすること
前回に引き続きではあるが、今回は後半に具体的な行動例を記載するので是非参考にしてみてください。
前回の最後に「上司、私がやっている仕事のやり方で、しっくりくるものと、しっくりこないものを教えてください。しっくりくるものはさらに増やし、しっくりこないものは改善します」と聞いてみてください。という話をいたしました。
「あなたのやりやすいように私の仕事のやり方を改善します!」という話だから、上司はあなたのアクションを歓迎するはずだ。ぜひあなたも上司に、「私がやっている仕事のやり方で、しっくりくるものと、しっくりこないものを教えてください。しっくりくるものはさらに増やし、しっくりこないものは改善します」と直接聞いてみてほしい。上司にもあなたにも、計り知れないメリットが生まれます。
上司との間によい関係を築くということは、「自分がやりやすいやり方を上司に押し付ける」のではなく、「上司にとってしっくりくるやり方を工夫して仕事にあたる」ということです。
上司の強みを生かす
上司との間に信頼関係を築くために、次は何をすればいいのだろうか。
ドラッカーはこう言っています。
上司の強みを生かすことである。部下の仕事は、上司がそれぞれの仕事のやり方によって成果をあげられるようにすることである。強みを発揮させ、弱みを意味なくさせることによって、上司が縦横無尽に働けるようにすることである。ピーター・ドラッカー
強みとは、秀でているもの、得意なこと、得意なやり方のことだ。それは、人それぞれ違う指紋のようなもので、仕事に就くはるか前に形成されている。しかし、強みを発揮させ、弱みを意味なくさせることによって、上司が縦横無尽に働けるようにするとはいったいどういうことなのだろうか。部下の務めは何だろうか。
ドラッカーはこう言っています。
あるがままの上司が、個性ある人間として存分に仕事ができるようにすることが部下たる者の務めである。ピーター・ドラッカー
それは、上司が普段行っている仕事のやり方に合わせようというだけのことです。右手と左手が同じように使える両利きという人はいないです。誰もが右利きか左利きかのどちらかです。同じように、何かを伝える際は文章で伝えることを好むのか、口頭で伝えることを好むのか。両利きの人はいないです。書き手か話し手のどちらかです。また、何かを知る際は、直接話を聞くことを好むか、文章で読むことを好むか。これも両利きの人はいないです。聞き手か読み手のどちらかです。
あなたの上司が聞き手であれば、上司の机に資料を置いてきてはいけないです。直接会って、説明をしてから資料を置いてこなければならないです。それが、その上司にとってしっくりくるやり方だからです。あなたの上司が読み手であれば、説明抜きに資料を机の上に置いておいても大丈夫です。黙ってもその資料を読み込んでくれるからです。それが、その上司にとってしっくりくるやり方だからです。
同じように、人にはそれぞれ特有のリズムがあります。朝型の人、夕型の人がいます。あなたの上司が、朝は誰にも邪魔されずに、やりたい仕事に集中したいという朝型の人であれば、上司のところに行くのは午後になってからの方がよいでしょう。さて、上司の強みを生かすためにはどうすればいいのでしょうか?
ドラッカーは「臆せず上司に直接聞こう」と言っています。決して難しいことを聞くわけではありません。性格を聞くのではなく、好む行動を聞くだけでいいのです。価値観を聞くのではなく、いつもやっている方法を聞くだけでいいのです。上司の人間性を理解するのではなく、いつも行っている習慣を確認するだけいいのです。以下の通り、具体的な例を紹介したい。
1、インプットは
- 文章の方がいい
- 口頭の方がいい
2、アウトプットは
- 文章の方がいい
- 口頭の方がいい
3、学び方は
- メモをとる方がいい
- 聞く方がいい
4、仕事の進め方は
- 人と組んだ方がいい
- 1人の方がいい
5、力が発揮されるのは
- チームの一員として働くのがいい
- 助手役として働くのがいい
6、力を発揮する環境は
- 緊張や不安があった方がいい
- 安定した環境の方がいい
7、得意な役割は
- 意思決定者としての方がいい
- 補佐役としての方がいい
8、実行の方法は
- 教えるときの方がいい
- 相談役の方がいい
9、力を発揮するのは
- 時間がなくギリギリの時
- 余裕をもって取り組んでいる時
10、仕事のやり方は
- 十分考えてから始める方がいい
- まずは始める方がいい
11、効率が上がるのは
- 朝の時間帯の方がいい
- 夜の時間帯の方がいい
12、文章を書くのは
- 下書きしてからの方がいい
- 完璧な文章を一つ一つ書く
13、スピーチする時は
- 原稿を用意する方がいい
- 何も用意しない方がいい
14、仕事ができるのは
- 詳細な筋書きがある方がいい
- 詳細な筋書きはない方がいい
例えば1のインプットで口頭(音声情報)の方がしっくりくる人は、「メールを送るだけじゃなくて、ちゃんと言ってくれないと分からないじゃないか」と言ったりします。あなたの上司はどちらでしょうか?文章の方がいい上司は、「いちいち電話しなくていい」と思っているかもしれません。
ここに挙げただけでも14もの違いがあります。どれも正しいか、間違いかではなく、人はさまざまだ、ということなのです。
部下のあなたがしっくりこないと感じる分には問題はありません。だが、上司に「しっくりこない」という実感が積み重なっていくと、あなたは正しく仕事をしているのにもかかわらず、「いまひとつ仕事ができない」という誤解を招きかねないのです。これが「きちんと仕事をしているのに評価されない」と感じる原因の1つかもしれません。
ぜひ、14個を上司と確認しあってほしいです。お互いの相違点を理解しあい、上司にしっくりくるように組み立てていくことで、上司の個性、強みを生かしていくことができるはずです。上司との間に信頼関係を築くために、ぜひ実践することをお薦めします。