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2020.12.14 COLUMN

家族が新型コロナウイルスに感染したために休む場合も、休業手当は受け取れるのか?

<質問>
夫が新型コロナウイルスに感染して、宿泊療養施設に入院しました。私は、PCR検査で「陰性」と診断されましたが、勤務先には「家族にウイルス感染者がいる者の出社を禁止する」という規則があるため、休むことになりました。

勤務先に問い合わせところ、「原則として年次有給休暇を使って休んでもらうが、休暇を使いたくない人や休暇が残っていない人は、欠勤扱いになる」と言われました。

年次有給休暇は使いたくないのですが、欠勤となって給料がもらえなくなってしまうのも困ります。こういう場合は、どうすればよいのでしょうか?

休業手当を受け取れます

<回答>
新型コロナウイルスに感染した家族を持つ従業員に対して、会社が就業しないように指示した場合、その従業員は平均賃金の60%以上の休業手当を受け取ることができます。

従業員が申請すれば、休業とはせずに年次有給休暇を取得して休むこともできますが、会社がそれを強制することはできません。ですから、今回のケースのように、「年次有給休暇を使って休むように」という会社の指示は、法的には認められません。

ご質問のケースでは、従業員から勤務先に休業手当の支払いを請求してみてください。

家族が感染したことにより休む場合も、休業手当を受け取ることができる

新型コロナウイルスの感染が広がっています。読者のまわりにもウイルスに感染した人がいらっしゃるかもしれません。

同居している家族が新型コロナウイルスに感染すると、濃厚接触者である家族に対してもPCR検査が実施されます。そして、PCR検査の結果が陰性だったとしても、原則として14日間は、保健所から自宅待機するように求められます。

ほとんどの会社は、保健所から自宅待機が指示された期間については、従業員の出社を禁止します。
そして、会社が出社を禁止した期間は、「働ける状態にある従業員の出社を禁止したのは、あくまでも会社の判断であるから、休んだ日は『使用者の責に帰すべき事由による休業』に該当し、会社は、労働基準法第26条に定める休業手当を従業員に支払わなければならない」とされています。

ご質問のケースについては、勤務先は、自宅待機の日を(欠勤ではなく)休業日として取り扱い、1日分の賃金の60%以上に相当する「休業手当」を支払わなければなりません。ですから、質問者は、「出社できなかった日については休業手当を支払ってください」と勤務先に請求してみてください。(なお、休業手当の請求は、正社員だけではなく、パートタイマーやアルバイトもできます。)

ちなみに、従業員自身が新型コロナウイルスに感染していることが判明した場合、その従業員は、法令により就業禁止となります。この場合、使用者の責による休業ではなくなるため、従業員は休業手当を受け取ることはできません。(この期間は、休業手当ではなく、健康保険から「傷病手当金」を受け取ることができます。)

年次有給休暇とする場合は、従業員本人から申請することが必要となる

平均賃金の60%に相当する休業手当が支払われるということは、裏を返せば「休業日は賃金の40%が減額される」ということになります。ですから、従業員の中には「休業ではなく、自分の年次有給休暇を使って休みたい」という人もいるでしょう。

このような年次有給休暇の取得は、従業員本人が申請したものであれば、原則として認められます。

ただし、会社が、休業する従業員に対して年次有給休暇を取得するように強制することは、法的には認められていません。したがって、会社から年次有給休暇を使って休むように指示されても、従業員は、それを拒否することができます。

逆の見方をすれば、休業日の年次有給休暇への振り替えは、会社が勝手に行うことができませんから、それを希望する従業員は、自分から会社に申請することが必要です。