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2020.12.09 COLUMN

非正規労働者への同一労働同一賃金に対応した賞与の支給とは

同一労働同一賃金は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差解消の取り組みを通じて、多様な働き方を自由に選択できるようにするという考え方です。賃金とは、労働の対価として使用者が労働者に支払う全てのものをいいます。では、同一労働同一賃金に対応した賞与の支給については、どのように対応すればいいのでしょうか。

1. 正規労働者と同一労働同一賃金で働く非正規労働者に賞与を支給すべきか

支給の判断の根拠となるのが「パートタイム・有期雇用労働法」と「同一労働同一賃金ガイドライン」の二つです。一つずつ見ていきましょう。

パートタイム・有期雇用労働法第8・9条

パートタイム・有期雇用労働法とは、雇用形態による待遇差を是正するための法律です。

これまで、パートタイム労働者の待遇是正に関しては「パートタイム労働法第8・9条」、有期雇用労働者の待遇是正に関しては「労働契約法第20条」で定められていましたが、平成30年6月29日に成立した「働き方改革関連法」の改正により、非正規雇用労働者に関する法律が整備・統合されました。具体的には、パートタイム労働法は「パートタイム・有期雇用労働法」と名称が変わり、労働契約法第20条はパートタイム・有期雇用労働法に統一されています。

同一労働同一賃金にかかわるのは、同法の第8条、第9条です。同一企業で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間における賃金や賞与をはじめとするあらゆる待遇について、第8条は「職務内容(責任の程度も含む)や職務内容・配置の変更範囲などに応じた待遇をすること(均衡待遇)」、第9条は「労働内容などが同じであれば同じ待遇をすること(均等待遇)」がそれぞれ規定されています。

つまり、正規雇用労働者と同じ仕事をしているのに、非正規雇用労働者であることを理由に待遇に差がある状態は、法に違反していることになります。

同一労働同一賃金ガイドライン

同一労働同一賃金ガイドラインとは、同一労働同一賃金の実現に向けたさまざまな課題を具体的に解決できるように策定されたガイドラインです。パートタイム・有期雇用労働法第15条で「適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定める」との規定を受けて、作られました。

同一労働同一賃金ガイドラインでは、基本給や手当、福利厚生など、項目ごとに同一労働同一賃金に関する指針が記されていますが、賞与についても具体的な取り扱いの記載があります。指針には、非正規労働者であっても、会社の業績などの労働者の貢献に応じた賞与を支給しなければならないことが明示されています。

派遣労働者を使用する場合は注意が必要

非正規労働者には、大きく分けて、正社員と同様にその企業に直接雇用されている有期雇用労働者と、派遣元から派遣されている派遣労働者の二つの雇用形態があります。ここで問題となるのが派遣労働者です。

有期雇用労働者には、直接雇用している会社から賞与が支給されますが、派遣労働者の場合は、同一労働同一賃金ガイドラインでは、派遣元事業主が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならないとしています。

従って、非正規労働者であっても、正社員と同様に会社への貢献に応じた賞与が支給され、派遣労働者においては、派遣元事業者から賞与を支給されることになります。そのため、派遣労働者を使用している企業は、賞与についてあらかじめ派遣元の会社と打ち合わせをしておく必要があります。

2. 業績賞与が同一労働同一賃金制度の対象

一般的に、賞与には一時金部分の賞与と、業績に応じた賞与があります。同一労働同一賃金における非正規労働者への賞与はいずれも該当するのかというと、そうではありません。

同一労働同一賃金ガイドラインでは、あくまで会社への貢献に応じた賞与、つまり業績賞与を支給しなければならないとしています。一時金部分の賞与を支払わなければならないとは言及していません。一時金部分の賞与は給料の後払いの意味があるためです。従って、企業は業績賞与について、正社員と同様の基準にのっとって非正規労働者に賞与を支払うことになります。

非正規労働者に賞与を支給しなくてよい場合として、「責任」に違いがあるケースなどが挙げられます。例えば、正社員Aには生産効率や目標値の達成に責任があり、目標が達成されない場合には待遇上の責任を負うが、非正規社員Bには生産効率や目標値の達成に責任がなく、目標が達成されない場合に待遇上の責任を負うことがないケースです。

このケースでは、待遇上の責任を負うかどうかにより、正社員Aには賞与を支給するが、非正規社員Bには賞与を支給しないとしても不合理とは認められず、問題とはなりません。

2020年10月に賞与に関する最高裁判決が出される

2020年10月13日には、大阪医科大学での正職員と有期雇用職員の待遇差について、最高裁が不合理かどうかの判決を出しました。今回の判決では、「正職員に賞与が支給され、有期雇用職員に支給されないのは、職務の内容の差などから不合理ではない」とされましたが、あくまで個別のケースであることに留意する必要があります。

3. 賞与においても不合理な待遇差がないよう整備する

「パートタイム・有期雇用労働法」と「同一労働同一賃金ガイドライン」のどちらを見ても、正規労働者と同一労働同一賃金で働く非正規労働者には、賞与を支給しなければなりません。派遣労働者は、派遣元事業者から賞与を支給されることになります。

なお、非正規労働者に支給する賞与は業績賞与部分になります。また、「責任」に違いがあるケースなどでは、非正規労働者に賞与を支給しなくても不合理には当たりません。

まずは、自社が非正規労働者に不合理な労働条件となっていないかどうかを確認し、不合理な労働条件となっているのであれば改善して、不合理な労働条件以外の理由で賞与の支給に差がある場合は、それが合理的である理由を明確にしておく必要があります。