コラム / ブログ
COLUMN & BLOG

2020.11.24 COLUMN

正社員間の同一労働同一賃金の対応方法とは?

同一労働同一賃金制度は、正社員などの正規雇用労働者とパート・アルバイトなどの短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者などの間で不合理な待遇差をなくすことを目的としています。2021年4月からは中小企業も適用になりますが、正社員間の待遇格差については、どのように判断すればいいのでしょうか。

1. 正社員間の同一労働同一賃金は制度の対象外

同一労働同一賃金は、雇用形態による不合理な待遇差の解消を図るための取り組みです。2020年4月に大企業を対象として施行され、2021年4月には対象範囲が中小企業まで広がります。派遣労働者の同一労働同一賃金は、企業規模に関係なく2020年4月に施行されています。

ここで対象となるのは、正規雇用労働者(無期雇用のフルタイム労働者)とパートやアルバイトなどの短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者との間で起こる問題であり、正社員間の待遇格差は対象になりません。しかし、制度が施行されたことで、社内でさまざまな声が上がる可能性があります。

同一労働同一賃金は正社員と非正規雇用労働者間の制度

同一労働同一賃金の考えは、「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」に根拠があり、正社員、派遣社員、パート・アルバイト、契約社員など、どのような雇用形態を選択しても格差のない待遇を用意しなければなりません。ただし、正社員間の待遇差について指摘された場合、対象外という意味で法には抵触しません。

放置は従業員満足度の低下につながる

給与をはじめとした人事評価自体に不満を抱えている従業員が存在する場合、そのまま放置していると、従業員満足度が低くなり個々のパフォーマンスに影響する可能性もあります。実際、アデコ株式会社公開した「『人事評価制度』に関する意識調査」によると、勤務先の人事評価制度に不満を抱えている人は全体の62.3%という結果になりました。

人事評価制度を不満に感じる理由で最も多かったのは「評価基準が不明確」というもので、62.8%の方が回答しています。次に多かったのは「評価者の価値観や業務経験により評価にばらつきが出て不公平に感じる」というもので、45.2%でした。賃金の評価制度が不明瞭で従業員の理解が得られないものであれば、組織全体で見直す必要があるといえるでしょう。

2. 正社員間の待遇差を指摘される事例

従業員から正社員間の待遇差を指摘されるケースには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、事例を解説します。

ケース1:グループ会社間での待遇差

ホールディングスなどのグループ企業の場合、グループ会社ごとに同じポジションがあることも珍しくないでしょう。仕事内容が異なる場合や業務量に差があるときは、賃金格差があっても指摘される心配はありません。しかし、業務内容に差がない場合、あるいは実際には違っていても同じように見える場合は、従業員から不満の声が上がることも想定されます。

同じグループの企業であっても、会社ごとに業務の目的や業務内容が異なるため、同じポジション、同じ仕事内容でも賃金に差があることは問題ありません。グループ全体で採用を行い、内定後に配属先が決まる場合も、賃金に差があることが法に触れる心配はないでしょう。

しかし、法に抵触するかどうかという観点ではなく、公平性を担保するという意味合いでグループ内の賃金格差をなくすことは、従業員の満足度を上げるための有効な待遇改善法といえます。

ケース2:新卒者の給与が在職者の給与を上回る場合

採用活動においては、新卒者の初任給を競合他社と比べて引き上げることで、スムーズに人材を獲得できるよう工夫することもあるでしょう。しかし、年齢給や在職年数に応じてベースアップを図る場合、在職者の給与とどのように整合性を取るのか、という問題が生じます。

新卒社員の給与を引き上げたときに在職者の給与を上回ったとしても、法律上は問題ありません。しかし、年次の昇給がある場合、入社2年目以降もその前に入社していた在職社員より高い給与を支払うことになり、既存の従業員から不満の声が上がる可能性が生じます。

こうした問題を解消するには、給与額の全体を見直し、整合性を保つようにする必要があります。賃金制度全体のバランスや人件費の増加、企業の業績などを踏まえて、さまざまな角度から慎重に検証し、従業員のモチベーションが低下しないように努めることが大切です。