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2019.08.05

望まぬ転勤制度の廃止が人材獲得の突破口になる

全国的にも住みやすいと言われている福岡という土地柄なのでしょうが、地元志向の学生がとりわけ多いように感じます。弊社の運営する「就勝ゼミナール」でも、地元で働きたいという学生は多く、転勤があるという企業は、特に女子学生に敬遠される傾向にあるようです。

そのような中、望まない転勤制度を廃止して、人材獲得につなげていく取り組みをしている企業があると聞きます。

損害保険大手のAIG損害保険は、ことしの春から転勤を希望しない社員に対して、原則として転勤させないことにしたそうです。特に損害保険などの金融系企業は、総合職の社員なら転勤があって当たり前で、それに対して何の疑いの余地のないところもありました。こうした取り組みには、大層驚きました。

負担感の多い転勤で優秀な人材が流出

AIG損害保険は、3年〜5年単位で社員を移動させ、配置転換させてきたそうですが、転勤を理由にして離職する社員も多いそうで、人事が頭を悩ませているとのこと。「時代のニーズに段々合わなくなってきている」(AIG損害保険の牧野祥一さん、NHKニュース「おはよう日本」の「おはBiz」コーナー、2019年7月22日放送分より)そうです。

例えば福岡から東京へ転勤するとなると、それだけで大きな負担になります。私の知人で、福岡から東京に転勤になった人がいますが、引っ越し代だけで数十万かかったと聞きました。これを「現代版の参勤交代」と呼ぶ人もいました。

もちろん、会社からの補助が出ている部分もあるそうなので、実際の負担額は、これよりも少ないでしょう。ただ、心理的な負担は、想像に難くありません。これまで住み慣れ、愛着を持った土地を離れ、人間関係が変わることへの不安…。人間の脳は、変化を嫌うので、なおのこと不安は大きく感じるでしょう。

先のAIG損害保険の福冨一成執行役員は、次のように述べています。

望まぬ転勤の廃止で応募者が10倍に

「本件だけが理由とはいえないと思うので、単純には比較できないのですが、応募の数は10倍に増えました。就活フェアなどでブースを出した時もかなりの人が集まってくださいます」(2019年7月3日付NIKKEI STYLE)

それだけ転勤というものに負担を覚えていることの反動とみてよいのではないでしょうか。これで応募者が増え、母集団形成がしやすくなり、優秀な人材が獲得できるようであれば、望まぬ転勤制度の廃止を検討してみる余地はあるかもしれません。

また、星野リゾートの星野佳路社長は、次のように述べています。

「自分の趣味や環境に合ったところに住んでいただいて仕事をしていただく。私たち会社も、社員の生活は大事な部分」(2019年7月22日放送NHKニュース「おはよう日本」「おはBiz」コーナーより)。

こちらは、転勤したい人は転勤していいし、したくない人はしなくていい。要は、自分が働きたいところで働いていいというものです。星野社長は、「それが結果的にサービスのレベルに結び付くし、それが顧客に伝わる」と述べています。これは従業員にとって、なかなかやさしいシステムだと言えそうです。

してみると、特に大手企業では、転勤制度は当たり前のように存在してきました。ただ、それが時代の流れで人材獲得難につながっているようであれば、一度立ち止まって考えてみる機会を設けてみるのもあるのかもしれません。

今週もお読みいただきありがとうございました。来週もお目にかかりましょう。

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