「教える部下指導」より「考えさせる部下指導 」
言われたことしか行動できない
「うちのスタッフは、教えたことはやるんですが、言われたことしか行動できないんです。」
こういう相談を頂くことがあります。
部下指導は、部下に教えることだと考えられがちです。
しかし、教えるという行為は、知っている人が知らない人に情報を与えることです。知識やマニュアルは「教える」アプローチでもよいかもしれませんが、仕事は必ずしも通り一遍のことばかりではなく、臨機応変に判断して対応することが求められる場面もしばしばです。
そういう場面に直面したときに、
「この場合、どうしたらいいんですか?」
「この場合の対応は、教えられていません。」
ということでは済まされず、自分で考えて対応することが求められます。
「自分で考える癖を身につける」ように育てる
部下が自らの頭で考えて行動する。
これはどうしたらいいのでしょうか。
それは、「教える」アプローチではなく、普段から「自分で考える癖を身につける」ように育てていくことです。自分で考える癖を身につけるとは、相談があったとしても、上司はすぐに答えずに
「あなたはどう考えているの?」
「この件について、あなたは何が問題だと思っているの?」
とまず本人の意見を聞いてみることです。
相談した上司からこう返答があったら、まずは自分の意見・見解を述べなければいけません。このやり取りの積み重ねが、自分で考える癖を育てていきます。
あれこれと教えることによって、部下にとって上司が「答えを教えてくれる存在」となってしまえば、部下が自ら考える機会を奪ってしまうことにもなります。
これが続くと部下は自ら考えることをせず、指示だけをこなすだけになり、仕事ではなく作業をするようになっていくことでしょう。皮肉なことに、「教える指導」は、「考える機会を奪うこと」にもなりかねないのです。
ゼロベースで目的から考える
「自ら考える癖を身につける」
これは、職場環境や普段の生活においても意識したいものです。法人や組織の規模が大きくなり、マニュアルやルールなどの仕組み、サービスのラインナップが充実してくると、上司の指示通りにさえ仕事をすれば良い、マニュアル通りに対応すれば良い、(ルールそのものが形骸化していたとしても、それに疑問を持たずに)ルールの通りに手続きを進めるように自ずとなっていきます。
そして、それで仕事が成り立ってしまうようになってしまいます。
また、現代社会では、何か悩みや課題があれば、深く考えなくてもインターネットで検索すれば、誰かが自分の悩み・課題に近い答えをネット上にあげています。こうして、世の中としてもどんどん頭を使わなくても済む方向へと向かっているところもあります。こう考えると、部下だけでなく上司である立場の人たちの問題かもしれません。上司の立場の人たちは、果たして本当に頭を使っているのか。普段から意識して考える習慣を持ちたいものです。
ポイントは前提や慣習を疑い、
「何のためにこれがあるのだろう?」
「何を実現させたくてこういう制度があるのだろう?」
とゼロベースで目的から考えることです。