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2018.12.25 COLUMN

“嫌いな人”を採用することがブレイクスルーにつながる~JR九州の唐池恒二会長に学ぶ~

忘年会が終わり、いよいよきょうはクリスマス。街はクリスマスムード一色ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。2018年もあとわずかです。来年のことも考えながら、ラストスパートといったところでしょうか。

さて、皆さまはJR九州といえば、何を思い浮かべますでしょうか。あの豪華クルーズトレイン「ななつ星in九州」、観光列車「ゆふいんの森」など、鉄道関連でいろいろあるのではないかと思います。それらの産みの親は、唐池恒二会長です。

その唐池会長、インタビューでこのように述べています。

「私は、鉄道があまり好きじゃないんです。さらにいうと、鉄道マニアも好きじゃない」(2018年11月11日付「FNNプライムオンライン」掲載、文化放送『The News Masters TOKYO』より)

「え?鉄道会社の会長なのに、鉄道が嫌い、鉄道マニアも好きじゃないなんて、どういうこと?」と思わずのけぞってしまいます。

たしかに、鉄道会社には一定数の鉄道好きがいるでしょうが、実は唐池会長をはじめとした、鉄道が”嫌い”な人が、実はJR九州躍進の立役者なのかもしれません。

鉄道”嫌い”が生んだ観光列車の数々

JR九州といえば、見た目にも楽しい、デザインにすぐれた観光列車をウリにしています。現在、12種類の観光列車(「D&S(デザイン&ストーリー)」列車)を走らせており、そのトップバッターが、「ゆふいんの森」です。

▲JR九州の観光列車「ゆふいんの森」(2014.4.19 久大本線由布院駅にて筆者撮影)

「ゆふいんの森」は、博多から大分県の湯布院・別府までを結ぶ観光列車。「乗った時から旅気分」をコンセプトに誕生しました。列車のデザインに、社外から工業デザイナーの水戸岡鋭治氏(ドーンデザイン研究所代表取締役社長)を起用し、女性客から大変評判のいい列車です。鉄道好きの私も、昔、由布院まで乗ったことがあります。この「ゆふいんの森」の産みの親が、他でもない唐池会長なのです。

先のインタビュー記事に、こんな内容も載っていました。

だからこそ「デザイン&ストーリー列車」もマニアを無視して作る。それは、女性や家族や子どもをターゲットに、どう喜んでもらえるかという発想でやっていくからであり、だからこそ大きな成功につながったのだ。(2018年11月11日付「FNNプライムオンライン」掲載、文化放送『The News Masters TOKYO』より)

鉄道好きの私だから言えることですが、この「ゆふいんの森」、おそらく鉄道マニアの発想では生まれてこなかったのではないかと思います。鉄道が嫌いな唐池会長だからこそ、自分が乗ってみたい、女性や子どもに喜んでもらえるような列車って何だろう?という発想になり、こういう列車が生まれたのではないでしょうか。その極めつけが、クルーズトレインの「ななつ星in九州」であるといえます。

▲JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」。写真は一番列車です!(2013.10.18 豊肥本線阿蘇駅にて撮影)

嫌い”な人ほど改善点を見出しやすい

よくよく考えてみれば、何かを”嫌い”な人ほど、改善点をよく見出してくれるのではないかと思います。例えば、鉄道なら「もっとこんな列車があれば乗りたくなるのに」とか、ホテルなら「もっとこんなサービスがあればいいのに」といった感じでしょうか。“嫌い”は”好き”の裏返しとはよくいったもので、その”嫌い”というのは、実は「何とかしたい」「いい方に持っていきたい」というエネルギーに満ちあふれたものなのかもしれません。

逆にいうと、何かを好きな人ほど今ある商材やサービスに満足してしまい、そこから新たな商材やサービスが生まれにくいという側面もあります。そういう意味で、先に紹介したJR九州の唐池会長は、鉄道好きや鉄道マニアを好んで採用しないといえるかもしれません。

もし、貴社の採用面接で「実は御社の商品が好きではない」「何とか改善したい」ということを述べる学生がいたら、それはブレイクスルーをもたらしてくれる人材なのかもしれません。面接でじっくり話を聞いてみてはいかがでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございました。

年内のコラムは、きょうが最後の更新です。次回は、年明け1月7日の更新を予定しております。採用担当者の皆さま、少々早いですが、どうぞよいお年をお迎えください。来年も当コラムをご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

▲毎年恒例、JR博多シティのクリスマスイルミネーションです(2018.11.7撮影)