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2018.08.27 COLUMN

青山学院大学陸上競技部・原 晋監督に学ぶ採用手法

8月が終盤に差し掛かってきました。この時期になると、井上陽水さんの「少年時代」をよく耳にします(今の時代は、森山直太朗さんの「夏の終わり」でしょうか?)。私も「少年時代」を聴くと、夏の終わりを否が応でも意識するのですが、そんなことはお構いなしで、相変わらず猛暑が続いていますね。お互い、あと少しだけ、熱中症に気をつけて、この夏を乗り切ってきましょう。

さて、駅伝ファンならずとも、この方を知っているという方は多いのではないでしょうか。青山学院大学陸上競技部の原 晋(はら・すすむ)監督です。2004年から青山学院大学陸上競技部の監督に赴任し、毎年正月恒例の「箱根駅伝」で、2015年から4年連続総合優勝を成し遂げている名伯楽のひとりです。その指導方法が、マスメディアに度々取り上げられています。

今回のコラムは、そんな原監督から採用手法を学んでみましょう、という内容です。早速、原監督の著書にある一文をご一読ください。

「私が選手をスカウトするにあたって基準のひとつにしているのが『表現力が豊かな選手』か『自分の言葉を持っている選手』」

(原 晋著『人を育て組織を鍛え成功を呼び込む勝利への哲学157』ぴあ/より)

この言葉を新卒採用の現場に置き換えて読み替えると、このようになるのではないでしょうか。

「私が新卒学生を採用するにあたって基準のひとつにしているのが『表現力が豊かな学生』か『自分の言葉を持っている学生』」

なぜ、このようにいえるのでしょうか。弊社の「就勝ゼミナール」の学生を例にとりながら、ひも解いていきましょう。

表現力が豊か=読書家=勉強熱心の可能性が高い

ここ数年、全体的な傾向だと思われますが、「就勝ゼミナール」の学生を見ておりますと、「言語化」を苦手にしている学生が目立つようです。

毎年、何百枚ものエントリーシートや履歴書の添削を行っていると、年々「書いて表現する力」が落ちているように感じます。その背景にはさまざまなものがあるでしょうが、ひとつは、LINEやインスタグラムの普及があるのではないかと考えられます。これらのSNSは「スタンプ」や写真ひとつ投稿するだけで「いいね!」の承認がもらえてしまいます。そこに言葉は介在しないのです。

つまり、自分の気持ちや考えを「言語化」しなくても承認してもらえるので、「それで伝わっているんだ」と思い、おのずと「言語化」の機会が減っていくと考えられます。そうすると、採用試験における履歴書やエントリーシートを書くのに難儀するということになるでしょう。

また、「読書離れ」が進んでいることも手伝っているのかもしれません。2018年2月26日に、全国大学生活協同組合連合会が発表した調査によれば、大学生の53.1%が、「1日の読書時間ゼロ」と回答していることがわかりました。なお、この調査では、スマートフォンの利用時間との直接的な因果関係は少なく、高校までの読書週間の影響が大きいとしています。

その一方で、「就勝ゼミナール」で面接の練習をしていると、表現力が豊かな学生に出会うこともあります。私、その人が読書しているか、していないかは、話していると割とすぐに見抜けるのですが、そうした学生に話を聞くと、例外なく読書家でした。

たとえば、大手印刷会社に就職した学生(18年西南学院大学卒)は、既に『入社一年目の教科書』や『人を動かす』、小説やエッセイなどを読破しており、語彙力が高く、言葉の選び方が非常に上手でした。

また、その彼は、オトナと話す機会を意識的に設け、色々指摘される中で表現力を磨いていったといいます。どちらかといえば物静かな学生さんでしたが、文章もしっかりしており、勉強熱心でした。きっと今ごろは第一線でバリバリやっていることでしょう。

面接の中で「何かおすすめの本はありますか?」という質問を学生にしてみて、読書家であるか、勉強熱心であるかを見極めるのも、おもしろいかもしれません。学生時代からそのような感じだと、入社してもきっと勉強熱心で成果を出してくれる可能性が高いのではないでしょうか(能力の再現可能性)。

自分の言葉を持っている=経験を積んでいる

「『タイム』よりも、表情や言葉の豊かな選手や走りに表現力があふれている選手を重視してきました」

「『明るい選手』とは、大きな声で『ハイッ』と返事できることではなく、自分の考えや思いを言葉、行動で表現できる選手を指す」

(原 晋著『人を育て組織を鍛え成功を呼び込む勝利への哲学157』ぴあ/より)

青山学院大学陸上競技部の原監督は、著書の中でこのように述べています。自分の言葉を持っているというのは、学生時代に大小問わず自分にしかできない経験を積み、それを言葉に落とし込んで思いや考えを表現している、ということだと思います。借り物でない自分の言葉で話すには、やはり自分の経験に裏打ちされてこそ、といえるのではないでしょうか。

では、自分の言葉を持っているというのは、どのようにすればわかるのでしょうか。やはり、その人にしかできない経験について、面接で深掘りしていくことが王道です。その人の経験を深掘りしていくことで、取りがちな行動(行動特性)や人間性などが垣間見えます。その深掘りの仕方については、次回のコラムでお話しますので、楽しみにお待ちください。

今回もここまでお読みいただき、ありがとうございました。というわけで、次回は、成果を出す人材を確保するのに有効な「コンピテンシー面接」についてお話することにいたします。それでは、また来週にお目にかかりましょう。