中小企業が注意すべき大手企業の採用動向5つのポイント
2023年3月15日の日経新聞で5日以上の長期インターン(就業体験)を実施する企業が増えているという記事が掲載されました。
これまでの新卒採用のルール変更に伴い、2023年4月に3年生になる学生が長期インターンに参加した場合、企業が採用選考に学生の情報を利用できるようになります。
そのような中、パナソニックホールディングス(HD)などが長期インターンの受け入れ数の拡大に動いています。
事実上、企業の採用活動の前倒し傾向が一段と強まりそうです。
今回は、中小企業が注意すべき大手企業の採用動向について以下の5つのポイントに絞って解説していきます。
【中小企業が注意すべき大手企業の採用動向5つのポイント】
1.長期インターンの実施増加
2.インターンシップでのスキル評価
3.新卒採用における前倒し傾向
4.AIによる採用選考の導入
5.多様性・包摂の取り組み
1.長期インターンの実施増加
冒頭でもお話した通り、大企業は、長期インターンの実施増加を進めています。
実際にパナソニックHDは、2022年度に約2週間の期間で行った職場実施型インターンを2021年度の2倍の1000人規模で受け入れました。2023年度は、さらに増やす方針です。
LIXILやJTBなどの大企業もこぞって長期インターンを採用したり、日数を伸ばして行っていったりする動きを見せています。
中小企業も同様に、長期インターンの導入を検討することで、学生との関係性を深め、採用活動の前倒しを図ることができます。
このような動きが増加している理由は、経団連や国公私立大学などで構成される産学協議会が昨年、2025年卒以降の学生から5日間以上のインターンに参加した場合、インターンで得た学生の情報を情報を採用活動に使えるという新たなルールを制定したためです。
2.インターンシップでのスキル評価
大企業は、インターンシップを通じて、学生のスキルを評価し、将来の採用につなげることができます。中小企業も、インターンシップで学生のスキルを評価し、将来の採用につながるような取り組みを行うことの重要性を理解しています。
インターンシップでのスキル評価とは、具体的には、企業が求めるスキルや能力には、コミュニケーション能力やチームワーク、問題解決力、クリエイティブな発想力などがあります。これらのスキルや 能力を評価するために、企業は参加者が取り組んだ課題やプロジェクトの成果物、またはその過程での発言や振る舞いを観察・評価します。
また、企業によっては、インターンシップ参加者に対してスキルアップの機会を提供することもあります。例えば、業務上必要なスキルを学ぶための研修や、プロジェクトリーダーとしての経験を積むためのチャンスを与えることが挙げられます。
インターンシップでのスキル評価は、参加者が自分自身のスキルや能力を客観的に見つめ、自己成長につながる重要な機会となります。
また、企業側も、参加者の能力や志向を正確に把握し、採用選考に活かすことができるため、双方にとってメリットがあるといえます。
3.新卒採用における前倒し傾向
新卒採用における前倒し傾向が生じている背景には、以下のような理由が考えられます。
①採用活動期間の短縮化
従来、新卒採用活動は主に大学3年生の夏から秋にかけて行われることが多かったが、最近では大学2年生から採用活動を開始する企業も増えています。これは、採用期間を短縮し、採用コストを削減するための取り組みとされています。
②優秀な人材の確保競争の激化
優秀な人材の確保が難しくなっていることも前倒し傾向の一因です。競争が激化しているため、より早期に採用活動を開始し、有望な人材を確保しようとする企業が増えています。
③多様な採用手法の導入
企業は、従来の学生団体への出向きや求人情報の掲載だけでなく、SNSやウェブキャンペーンなど、多様な採用手法を導入しています。これにより、より多くの学生にアプローチできるため、早期からの採用活動が求められるようになりました。
以上のような理由から、新卒採用における前倒し傾向が生じています。企業側は早期に有望な人材を見つけ、人材確保の競争に勝つことを目指しています。一方で、学生側は早期から就職活動を始める必要性が生じています。
実際にメルカリは、16歳以上の学生を対象にインターンを実施しています。その中で大学1〜2年生に内定を出したという事例があります。
ファーストリテイリングでは、大学1年生からインターンや選考を受け入れ、実際に1〜2年生で内定を獲得している学生が毎年複数人いるとのことです。
大企業は、新卒採用の前倒し傾向が一段と強まっています。中小企業も同様に、新卒採用においては前倒しの対応が必要であると考えられます。
4.AIによる採用選考の導入
大企業は、AIによる採用選考の導入を進めています。中小企業も、人材採用においてAIを活用することで、採用プロセスの効率化や正確性の向上を図ることができます。
ちなみに近年、AIが採用選考に導入される主な理由は、以下の通りです。
①採用コストの削減
採用活動は多くのコストがかかります。AIを導入することで、面接官の数を減らし、採用コストを削減できます。
②効率的な選考プロセスの実現
AIを用いることで、履歴書の情報や面接内容を効率的に分析することができます。これにより、より正確かつ迅速な選考プロセスを実現することができます。
③人的バイアスの排除
人間は、様々なバイアスを持っています。これに対して、AIは客観的に評価を行うことができます。また、AIを用いることで、選考に偏りが生じる可能性を減らすことができます。
一方で、AIによる採用選考には課題もあります。
たとえば、AIが選考に用いるデータが偏っている場合、偏りのある選考結果が出ることがあります。
また、AIが評価する能力や特性が十分に広い範囲に及んでいない場合、候補者の能力を正確に評価することができないこともあります。
以上のように、AIによる採用選考の導入は、採用活動の効率化や正確性向上に貢献することが期待されますが、選考に関するデータの偏りやAIの能力範囲には注意が必要です。
5.多様性・包摂の取り組み
多様性・包摂の重要性が高まる中、大企業はそういったことに積極的に取り組んでいます。
つまり、採用において性別、年齢、人種・民族、国籍、障がいの有無など、多様な要素が尊重され、すべての人が平等に仕事ができる機会を享受できるということです。
中小企業も多様性を尊重し、採用プロセスや職場環境を改善することが求められます。
【まとめ】
採用のルール変更が行われ、5日以上の長期インターンを実施する大企業が増えています。
その理由としては、2023年4月に3年生になる学生が長期インターンに参加することで、その学生の情報を企業側が採用に利用できるようになるからです。
こうした動きから長期インターンを採用する大企業が増えてきています。
ほかにもより優秀な人材を早いうちから確保したいという理由から、採用を早めたり、AIなどを活用して、よりコストをかけずに良い人材を採用したいという思惑があることが理解できます。
このような大企業の動きを見ながら、リソースが限られる中小企業がどのような戦略を取って良い人材を確保するかを考えていくことが非常に大切です。
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